君色の明日がきっと来る〔赤〕*

03. ページ5

.








前を歩いていた大毅が、まるで私の声に応えるみたいに後ろを振り返る。








ちょっと、こっち見ないでよ、バレちゃう.......っ、








そう思った時にはもう遅くて、離れていた距離がまた少しずつ縮まっていく。




さっきよりもずっと胸がドキドキして、その音は雨の中でも聞こえてきそうなぐらい。








なんで来んの？




私なんか放って、早く家帰りなよ......








.








小走りで、水溜りを踏みながらパシャパシャと私に近づいてくる大毅。








でも突然、その音がふっと消えた。








さっきまでうるさく降っていた雨も、近づいてくる足音も。




目に見える景色は同じなのに、まるで無音の世界。








次の瞬間、心臓がドクンッと大きく跳ねた。








「......ぅ、」








その衝撃に思わずしゃがみ込めば、すぐに音が戻って来る。




と同時に聞こえてきたのは、聞き慣れた声。








「おいっ、A！なにしてんねん、大丈夫か？！」

「だい、き......っ、」








頭の上で傘をさして、背中をさすってくれる大きな手。




その温もりに、ますます鼓動が早くなる。








ドキドキのレベルを超えて、破裂するんじゃないかってくらい大きな音。




いくら好きな人の前でもドキドキしすぎでしょ.....








そんなことを考えてみても、どんどん苦しくなる呼吸と、胸を締め付けるような痛みは治らない。




チラッと見えた大毅は、この世の終わりみたいな顔してた。








「っ、......A？聞こえるか？しっかりせぇよ、！」








そう言いながら、ギュッと引き寄せられる身体。




なんでそんなに焦ってんの？てか、そんな簡単に抱きつかないでよ......








あんたのせいで、ドキドキ止まんないんだけど。








そう言って笑ってやりたい気持ちとは裏腹に、また少しずつ遠くなっていく大毅の声。








.








私の意識はそこでプツンッと途切れた。








.

04.→←02.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す