ねえ、起きてよ ページ1
机の上はビールの空き缶と煙草の吸殻だらけになっていた。
「ねえ、また約束破った」
眠っている彼に声をかける。相も変わらずゴミだらけの床だ。明日は掃除をしなければいけない。
時計を見ると、もう深夜三時を回っていた。
さっきまでバイトだったので、さっさとシャワーを浴びて死んだように寝てしまいたい。
でも、彼に構ってほしい。
「ねえ、起きてよ」
彼の耳にそっと呟くと、ピクリと体を震わせたので、起きるかな、と一瞬期待したけれども
依然、目を閉じたまま深く眠っていた。
「……ねえ、昨日も、その前も、こうだったじゃない」
「好きだって、言えよ。この間みたいに必死になって私に好きだって言えよ」
「……ねえ、起きてよ」
静寂で満たされた部屋は、私が孤独だということを再確認させる。
瞬間、彼の声が頭をよぎった。
『ずっと好きだから、そばにいてくれよ』
「……ずっと、なんてない」
「この間も、言ってた。好きだって。でも、もう私のこと気にかけてくれないじゃない」
「お金、渡して。それで君は生きてるけど、私の心も体も全然満たしてくれないじゃない。私、死んだままじゃない。君は生きてるのに、どうして私が死んでるの」
「好きだって言えばいいのに。それだけで、嘘だっていいのに」
「ねえ、起きてよ」
どうしようもないぐらついた感情が押し寄せてきてたまらなくなると机の上の缶ビールを開けて、飲み干した。
不味い。物凄く不味い。
「どうしてこんなものが美味しいのよ。趣味が悪いわ」
空き缶を彼の頭に投げつけると、本当に悲しいくらいにとぼけた音が部屋に鳴り響いて、
阿保らしくなると制服のまま部屋を飛び出した。
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作者名:雨雨 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/amenochiame1/
作成日時:2017年12月4日 23時