雨のち水溜り (ページ1)

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私は先日、半年間だけ勤めた会社を辞めた。
なんでこんなことになったのだろう…
小さい頃は将来はケーキ屋さんになる！とかたくさん夢があった。
でも高校、大学とたくさんのことを知るうちに自分は何がしたいのか分からなくなり夢を見つけることができないまま、とりあえず就職しなきゃ！という焦りから中小企業に就職した。
しかしそんな気持ちで入った会社の仕事を楽しいと思えるわけもなく悩んだ末に辞めることを決心した。
もちろんこの先のことなど何も考えてはいない。

『はぁ…勢いで辞めちゃったけどこれからどうしよう…』

何もすることがなくただ自分の部屋でボーッとしていたとき、ふいに携帯が鳴った。
プルルルル…
それは幼馴染のキイチからの電話だった。

『もしもし？』
「もしもしA？久しぶり！最近忙しくてなかなか連絡できなくてごめん。会社、どうした？」

キイチにも相談はしていたが、最近何かと忙しそうで心配をかけたくなくてまだ会社を辞めたことは伝えていなかった。

『うん…。結局辞めることにした。』
「そっか…これからどうすんの？」
『まだ決めてない。心配かけてごめんね！でも何とかするから大丈夫！』
「………。」

長い間があってふいにキイチは何かを思いついたように質問してきた。

「あ、Aって今一人暮らしだよな？なら家事とかは得意？」
『え、まぁ一応一通りはできるけど…。どうしたの？』
「了解！ちょっと待ってて！また掛け直す！」

プーップーッ
キイチはそう言うと電話を切った。

『えっ！ちょ… もう、なんなのよ…』

キイチは口より手が先に動くタイプだからこういうことはたまにある。
会社を辞めたことをキイチに伝えられてホッとしつつこれからのことを思うと頭が痛くなってきた。

結局その日キイチから連絡がくることはなかった。