雨に濡れた日 (ページ6)

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「…はい、」

小声で、精一杯の返事。

すると先輩は、ちょっと考え込むように、手を止めた。

…重たいと思われたかな？

それに、面倒だよね？

不安でいっぱいな私に先輩は、

「…好きな男とか、いたりすんの？」

優しく、そう聞いた。

「…、」

います、怜央先輩です、

伝えられたなら良いのかも知れない、

だけど、今日だけの関係。

面倒、そう思われたくない。

「…いません。」

偽るしかなかった。

「…よかった、」

先輩は安堵したような表情。

…そうだよね、

良かったと思った。

微笑む私の頬に、

先輩の手が伸びた。

「うん。

良かった。

だっていますって答えられても、やめる気なかったからね。

俺が君のこと、最初に抱きたいって思っちゃったから。」

っ、

先輩の顔が近付き、額が触れ合う。

そして

「無理な話かも知れないけど。

今日だけは俺のこと、好きになれば？

初めては好きな男がいいでしょ。」

「…先輩、」

「ん？」

気付いたら、先輩の首に、図々しくも抱きついていた。

「…っ、好きにさせてください、

先輩のこと。」

…前から好き。

今も好き。

それでもそれでも、

今日が終わった時に、
忘れられないくらい、

もっともっと、

大好きになりたい。

「りょーかい。」

一瞬真顔に変わり

跨り見下ろす愛しい人を、

その初めての光景を、

下から眺めた。