雨に濡れた日 (ページ19)

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あれから数日経っても変わらない。

先輩に言われた言葉が、

頭の中を駆け巡る。

"初めてってのも、嘘だった？"

"抱いてくれれば誰でもいいんだね"

"男に抱かれるために生きてんの？"

…違う、

誰でもいいわけじゃない、

全部全部、先輩だったから。

でも、そんなこと今更言ったって、
重いでしょ…？

あの日そんな面倒なことを伝えてたら、きっとあのマネージャーの子みたいに、気だるそうな顔で交わされて、あんな風に優しくだなんて、してくれなかったでしょ…？

もう全部、遅いんだ。

彼氏みたいに優しかった先輩は、あの日1日の幻で、

それと引き換えに、私は先輩に好きと伝える機会を手放した。

そしてもう二度と会わないと決めていたのに。

どうして、わざわざ、その幻の記憶さえも、塗り替えに来たの…？

「…っ、」

なるべく人目につきたくなくて、
屋上へと出た。

だけど、

ドアの音で、すぐに分かった。

多分、ちょっと前からつけられていたのだろう。

ようやく座り込んだ私を

「…A。」

優しく、いつもの声でそう呼んだ。

「…どうしたの？」

「…悲しい顔してんな。

なんかあったん？」

「んー、ちょっと失恋。」

なるべくサバサバと、答えた。
心配かけたくなかったから。

「…こないだ言ってた男のことか？」

「うん、分かってたけどね。

叶わない、だけじゃなくて、嫌われるとまでは思ってなかったから。」

「…そうなんや。」

「…うん。」

廉くんは、終始優しい声。

気付いたら私の真横に座り込んでいた。

「…男心の一つや二つ、俺からアドバイスしてやろうと思ってんけど、

俺はその男の気持ち、全くわからんから、出来ひん。

お前のこと嫌いになる男なんて、この世におるんかなって。

それくらい、俺は、お前のこと、嫌いになりたくてもなれへん程、

好きやから。」

廉くんの優しい言葉。

それなのに、
脳裏に浮かぶのは、

"廉くんと付き合うんだ"

見透かしたような怜央先輩の声。

"女優だね"

"誰でもいいんだ"

"俺には興味ないけど"

嘲るような、あの声が、
頭の中を駆け巡る。