雨降り日和 (ページ5)

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「眠れない？」
「……はい」
「なんか水分取ろうか」

　熱のせいだろうか、彼の顔がぼやけて見える。彼は冷蔵庫を開け、お茶をコップに注ぐと私をゆっくりベッドから起こしてくれた。

「気をつけて」

　彼に支えられながら一口二口飲み、喉が潤うとまた横になった。

「熱また上がったな、もう一回測ってみようか」

　寝転がったまま体温を測れば40.1℃の文字が表示された。体調を崩しやすいとはいえ、ここまで熱が上がるのは久しぶりだ。4月か5月に40.3℃まで上がったのが最後だろうか。

「いつもこんなに上がるの？」
「まあ、上がりやすい体質ではあります。40℃こえるのもそんなにそんなには珍しいことじゃないし」
「そうなんだ。まあとりあえず明日の朝一番で病院行こう」

　うんうんと頷くと彼は優しく笑って、布団をかけ直してくれた。

「辛くて寝れないかもしれないけど、寝た方が絶対体にいいから」

　彼はそう言うとぽんぽんと一定のリズムで叩いてくれる。子供扱いされているみたいで少し恥ずかしかったけど、それよりも安心感とか嬉しいとかの方が勝って、ずっと寝れなかったというのにすぐに夢の中へ連れ込まれた。

　次に目が覚めたのは、日が昇ってからだった。また夜中に起きて眠れない思いをしたらどうしようかと思っていたが、きちんと眠れたらしく心底安心した。

　節々が痛く、寒いのに暑い。腕ひとつ動かすのもだるかったが、なんとか気力で上体を起こし彼を探す。

　もうソファーに彼の姿はなかった。どこに行ってしまったのだろうと考えていれば、かすかに水の音が聞こえた。
　シャワーを浴びているのかもしれない。それならもう少し横になっていようと手をついたときだ。

　がらっと戸が開いた音がした。お風呂から上がったようだ。

　数分して肩にタオルをかけた彼が洗面所から出てきた。髪は湿っていて、昨日見た彼とは少し違っていた。

「おはようございます」
「起きたんだ。体調はどう？」

　髪をがしがし拭きながら彼は私に問う。
　身体は結構な勢いでだるく、すべての風邪を詰め込んだような体調の悪さで、大丈夫なわけはなく。かといって「大丈夫じゃない」なんて言えるはずもなく。

　私が少し口ごもると彼は「大丈夫じゃないよね。ごめんごめん。ゼリーとか食べられる？」と笑って言ってくれた。

「ゼリーなら……」

　本当はあんまり食べられる気はしていないけれど、善意をお断りするのも気が引けて頂くことにした。