→続き ページ14
そんな彼の横顔はずっと変わらない。きっと私の横顔も変わらない。
何故なら、私達はまたあの時と同じ年齢になったのだから。
あの日、城が襲われて死んだ時と同じ年齢になった私達は、変わっていなかった。
ついこの間まで･･･何十年も前に滅んだ我らが祖国を忘れ生きていた。
死ぬ間際まで愛し合っていた彼の事すら、忘れて。
『前世の記憶とかホントにあるんだ、なんて思ったよ』
「うん、俺もそう思う。･･･ほんまに奇跡や、こんな事があるなんてな」
『これからどうするの？』
彼はんー、と考え込む仕草をする。視線が右往左往して、ゆっくりと私に向いた。
「俺はな、思い出したからには忘れられへんねん」
『･･･ん』
「俺達がこうやって生きてるなら、きっとあいつらも生きてる、思い出せる筈や」
分かってる、分かってるよ。きっと貴方ならそう言うと私は知っていた。
希望に満ちた瞳だ。希望に満ちた声色だ。――ああ、なんて美しいんだろう。
グッと前を見据えた彼は、ゆっくりと立ち上がって私の前にやって来る。
座ったままの私と、立ったままの彼。私を見下ろしている彼の瞳は強く輝いていた。
あなたは“我々”と出会ってから、無理に見上げる事を止めたよね。
どれだけ背が小さくて馬鹿にされようが、度量を大きく持ってやればいいって。
馬鹿に出来ないぐらいに強くて優しくなればいいって。
「A、一緒に行こう。俺達ならきっと･･･あいつらを見つけられる」
『･･･はい、喜んで』
あなたが差し出してくれた手にそっと手を重ねた。大丈夫、きっと私達なら何だって出来る筈。
しっかりと手を繋いで外へと出ていく時、彼の音楽がまた聴こえた気がして振り返った。
がらんとしたステージだけが目に入って、彼に手を引かれて慌てて扉を閉じていく。
後ろ髪も引かれなかった。だって彼の音楽は絶対にまた、此処で聴くことが出来ると信じている。
きっと次にここで聞ける彼の音楽は、我々の最誕の音色であると確信しているから。
終わり
ログインすれば
この作者の新作が読める(完全無料)
←最誕の音色【rb】
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 60人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
