鋏をいれたあと

点と線　はさみ番外編１ ページ39

カ「説明、できるよね？」



目が覚めたら、完璧キレてるカンタくんが目の前にいました。







少しだけ、仕事で嫌なことがあって、悩むというよりは納得がいかないけどどうにもならないことをうまく消化できなかった、っていう感じで。気落ちしてて、少し自暴自棄になっていたのかもしれない。
虫さんから、トミーと打ち合わせのあとご飯行くけど来る？って連絡もらって、いちもにもなく飛びついた。
同僚と飲むんじゃ解消されない、この鬱憤を、吐き出したかったから。


カンタくんにいっていいか聞かなきゃ、って頭によぎったけど、あんなに忙しいカンタくんに、遊びに行きますって言うのが、いまのわたしにはできなくて。
まーいいか、ご飯だし、って軽い気持ちで、連絡をしなかった。



カ「虫さんから、Aが結構酔ってるから迎え来てやってー、って言われてキイチ行かせたわけ、……ねえ、聞いてるの？」


トミーさんは先に帰って、その後も虫さんと飲んでたのは覚えてる。おそらく、ここ最近のストレスで睡眠不足、そこに久しぶりのお酒ですぐに酔いが回って、それに気が付かなかったんだろう。いつものペースで飲んじゃって、……やっちゃった、
カンタくんのベッドを占領して、ぐーすか寝ていたらしい、慌てて起き上がると、ひどい頭痛。


カ「俺に黙って、……そんなになるまで飲んで、」



わたしが顔をしかめたから、さらに機嫌を悪くしたカンタくん。無言で、飲んだ朝にって書いてある胃薬を渡してくれる。頭を下げて、ありがと、って受け取ると、そのまま手をがっしり掴まれる。



カ「飲み行くの、きいてないけど？」


一語ずつ区切るように力をこめてしゃべるカンタくんに、もうただ謝るしかなかった。




そのあとは、ちゃんとしなきゃって思ってすごく大人しくしてて、ずっとねちねち言ってくるカンタくんにも耐えて謝って、会社でもミスして謝って。なんか、自分がどうしようもないやつに思えて、寝る前に少し泣いたり。
どんどん気持ちが落ち込んで、同僚にも元気ないね、とか心配される始末。

ため息ばかりつくから、いつか酸欠で死んじゃうかも、って本気で思った。




つづく

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