鋏をいれたあと

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カンタside



『あ、そうそう、誕生日おめでとう！ＬＩＮＥでも送ったけど、直接言いたくて。』



はにかんだAが、カバンからなにか掴んでだした。いや期待するなっていうほうが無理でしょ、プレゼントでしょ、これ。



でもなんか小さい、なにこれ。



『じゃーん！今月から一人暮らし、始めました！はい、どうぞ、』



カ「・・・・え、うそ。まじで？」



鍵をつまんでAは笑った。俺は、驚きで固まる。


『いつでもきていいからね。ほら、どうぞ。』



促されて、おそるおそる鍵を受け取る。
うわあ、彼女の家の、鍵だ。


カ「めちゃくちゃ嬉しい。」


まじまじと、その鍵を見つめる。先がポコポコしてて、あの、名前わかんないけど、いい鍵だ。テンプル？だっけ。



頭が回らなくてどうでもいいことを考えている、いやいやいや、まてまて。



カ「ちょ、待って、一人暮らし？ホントに？」



『うん、大学は入るときから親に言われてて。就職と一人暮らしが同時に始まると、大変だから、一人暮らしやりたかったら４年から、って。』



『あー、たしかに。』



すげえ。




『就職先とかもあるから、場所は悩んだけど、とりあえず大学と、この家に行きやすいかどうかだけで決めちゃった、あはは』



のんきに気の抜けた顔で笑うAに、なんか心配って思う。
そんなんでいいの？嬉しいけどさ。




カ「これ、もらっていいの？」



『もちろん、わたしとカンタくんしか使えない鍵だよー』




あ、あと。かばんをごそごそしながら、小箱を取り出したAは、これも、って差し出してくる。
まだあんの！？



カ「え、もうもらったよ！」


『そっちはお金かかってないから。こっちはちゃんと買ったやつ。』




リボンを解いて、開けると、キーホルダー。



『えっと、鍵につけてね』



照れているのか、もじもじするAがすごくかわいい。
俺が好きな服のブランドの、小物。これは嬉しい、単純に。


カ「すごいねえ、」


『ん？』


カ「俺、人からもらったもの、あんま使わないけど、これは使う、」


もの貰って嬉しいけど、結構好みがはっきりしてるから、使わないでとっとくことが多いから、ってもそもそしゃべると、Aはぱああ、って笑顔になった。




にこにこするAと手の中の鍵を見比べて、こんな幸せな誕生日プレゼント、もう二度ともらえないかも、って真剣に思った。



つづく

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