鋏をいれたあと

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カンタside



引っ越しのごたごたにまぎれて、世間話の延長に、Aと別れたことを説明すると、トミーとキイチは固まった。


ト「・・・・いつ？」



カ「ハワイから帰ってきて・・・、ちょっとたったときかな」



だからクリスマスも暇んなった、っておどけながら、段ボールに荷物をつめる。
視線が痛い。


ト「そっかー、え？……あんまよくない別れ方な感じ？」


カ「うーん、まあ、俺がフラれたようなもんかな、」



ト＆キ「・・・・・・・・。」




黙り込んだ二人に、そういうことだから、って言いながら荷物を運んで部屋をでる。



なにをしていても思い出す、Aのこと。現実を受け入れられなくて、急に感情が爆発しそうになって、深呼吸する。
でも、幸いなことに引っ越しと年末の忙しさも相まって、感傷に浸る暇なんか、ない。

考えることをやめて、目に付くものから、手をつけていった。




無事引っ越しをして、時間が経って。


毎日毎日、時間に追われて、どこをどうやってやりくりして、Aに会いに行ってたんだろう、って思う。付き合ってるときは、頻繁にAに会ってたけど、最近は疲れやすくて、不思議に思う。なんであんなに元気だったのか、Aに会いに行く時間、今はきっと作れない。

そんなとき、健康診断の結果がきて、ふと思い出す。

Aと結婚して、Aがお母さんになったら、きっといいお母さんになるんだろうな、って思ったこと。


いつも、駄々をこねる俺に、一口でいいから、って野菜を勧めてくれた。思い出しながら、自分が笑ってることに気付いて、どうしようもなく、情けなかった。





返したくないから鍵は返してない。


連絡先だって、消せない。



こんな未練たらたらの俺を、Aは笑いとばしてくれるだろうか。



しょうがないなあ、って、






眉を下げて、もう一度笑ってくれないだろうか。





別れたあとに、いろんな女の子から告白されたけど、なんかその気になれなくて、付き合わなかった。
べつに彼女なんかいなくても平気なタチだし。
でもAを失ったのは、からだの一部がなくなったみたいに、不自由だった。


ご飯行って、注文するとき、Aは？って聞きそうになったり
買い物にいってAこれ好きそうって思ったり



いまでもそう。
夜中に、今何してんのかな、ってＬＩＮＥひらいちゃったり、
編集中に、あれ？最近A会いにこないじゃん、なにしてんの、って。


とっくに終わったのに。

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