未来への花束２

５５のあと４ ページ43

お疲れー、と仲のいい同僚に声を掛けてエレベーターに乗る。
思わずカバンを握る手に力が入って、きょろきょろしてしまう。


エレベーターホールを出て、エントランスに向かうと、真正面に人影。
あ、って認識したと同時に、向こうが片手をあげて、無視できなくなる。


『お疲れ様です、』



強張った声がでて、ぐん、と近づいた距離に警戒する。
やっぱり今日も駅まで、って話になり、断り切れなくてあいまいに返事をした。



カ「遅かったね」



会社を出ると、声を聴いただけで、安心して力が抜ける。
カンタくんの声だ。



声がしたほうに振り向くと、心臓が止まるかと思った。


スーツ、に黒ぶち眼鏡。



かっこいいいいいいいいいいいいいい





『あ、……待たせちゃった？』


自然に、カンタくんに返事をする。意識しなくても、この隣にいる同僚に話すときとは全然違う、甘えた声が出て、ちょっと照れる。
同僚は驚いたように私を見て、察したようだった。



ト「お車はどうなさいますか」



カンタくん同様スーツに銀ぶち眼鏡のトミーさんは髪を左だけ耳にかけて、怖いけどめっちゃかっこいいヤク……ゴホン！……、なんでもない。



秘書と社長みたいな設定らしく、カンタくんは胸を張って私の隣にくると、タクシーで移動するから、あとは頼む、って短く言った。



ト「かしこまりました」



失礼します、トミーさんは眼鏡を直すときに私をみてニッて笑って去っていった。
イケメンーーーー！！！



カ「A？」



やさしく微笑んだカンタくんが、腕をくの字に曲げて、わたしに向けてくるから、そこに腕を通した。同僚を振り返って、ごめん、とだけ言うとめちゃくちゃかっこいいカンタくんを見上げながら、歩き出した。





角を曲がると、いつもの車が目に入って、カンタくんと乗り込む。
助手席にはもうネクタイを緩めたトミーさん、運転はキイチくん。



『……っあはっはははは！』



ト「イヒヒヒヒヒヒ！！！」



カ「くくくっ……、ちょっともー笑わないで、笑っちゃうから！！！」




イタズラが成功して、嬉しい子供みたいな。
みんなで爆笑して、ほんとうにみんなが愛おしいな、って思った。





おわる


怖いひとを従えてる普通の人が一番こわいね！

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