未来への花束２

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カンタside


地獄みたいな一か月だった。
動画の準備や撮影、編集は楽しい。スケジュールがきついだけで、いつもみたいに好きなことをやってるだけだし。でも自分のプライベートな時間になると、Aのことしか考えられなくてでも会いたいな、って思っても深夜だったり明け方だったりして、まだ合鍵もらってなかったから、行けなくて。
自分の部屋に一人でいると、Aの私物が目に入ったり、一緒に寝たこと思い出したりして、なんか耐えられなくて、だんだん睡眠時間が減っていった。
ゲーム部屋のソファで編集したりすることが多くなって、そこでうとうとしたりしてるうちに、体調を崩す始末。

AにLINEしてみると、会社の人とのバーベキューの写真がおくられてきて、もっとつらくなったりして。
俺がいなくてもAは平気そうだな、って思ったらもうどんどんメンタルやられてきちゃって、そこからはもう、最悪だった。
熱でるしマネージャーに怒られるし、病院行く時間もったいないし。


間に合わせで、薬局に寄って、本当によかった、って思う。
Aが目に入った瞬間に涙があふれてきちゃって、寝なくても食わなくてもAに会わなくても全然平気、って嘘が、全部暴かれて、立ってるのも辛くなった。





甘えてる、って気付いたとき、すっごい恥ずかしかった。

Aに甘えてんの。
別に大丈夫なのに、なんとかなるのに、Aに会って優しくされたくてされたくて我慢できなくなって、た。


会ってわかった、だっていきなりめっちゃ元気でたし。


こんな弱い自分、嫌だと思うと同時に、Aに甘える自分は、嫌いじゃないって思う。へんな感じ。


まー、一か月、は普通に会えなさすぎだったけど。







『おはよう、カンタくん』



５時間以上寝るのなんか、何年か振りで、逆に頭が重い。でも体調はバッチリ回復して、Aってすごいなあ、って思う。どんな薬より効く。


キ「あ、カンタさん具合どうすか」



カ「うん、昨日よりマシ」


いきなり元気になったら、Aに会えなかっただけじゃん、ってなるので、ぼかして答える。でもキイチはわかったみたいで、あー、とか何とか言いながら、キッチンに消えていく。



『朝ごはん食べられそう？』



カ「うん、食べるよ、今日はなに？」



キ「魚焼きますよ」


キイチが菜箸をもって割り込んでくる。



カ「……、おまえじゃまだな」



怒るキイチに、思わず笑みがこぼれた。



つづく

笑顔取り戻し男

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