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『なんでかなあ』
ひき肉とキャベツとにらをこねながらつぶやく。
水溜りハウスにも慣れてきて、お二人の忙しさも肌で感じている。ここのお手伝いをしながらたまに就活をして、わたしは人生で一番のびのび過ごせていた。
カンタくんはどうしてわたしにいろいろ買ってくれるのか。
高校でのことしか知らないし、今のカンタくんはそういう人なんだろうと思って無理矢理納得しようとする。トミーさんみたいに、動画を絡めてハイブランドで散財するのと、似たようなものかなあ。
でも、
ま「ギョーザ?」
『うん!』
ま「カンタさんになんか言われたって聞いた」
キッチンで餃子を包んでいるとまんずが来て、カウンター越しに話しかけてくる。しかも触れてほしくない話題を…。
『…まあね…』
ま「殴ったんでしょ?」
『う゛』
言葉に詰まったわたしを見て、へらへらしてたまんずが急に真顔になる。
ま「…実家帰れば」
実家、
頭の上にずしーんと乗った重たい言葉。口の中だけで、でもって呟く。当然まんずには聞こえない。
ま「昔とは違うし」
『まあ、ね…でも』
ギョーザの皮にタネを乗せて水を塗る。昔からお母さんのお手伝いでキッチンに立つのは好きだったのでギョーザを包むのは得意。大葉、チーズ、キムチもある。
『わたしの知ってる佐藤先輩はもういなくて、』
ま「うん」
『カンタさんっていう別の人だと思えばなにが起きても結構平気かもしんない』
さすがに、面とむかって言われたあの言葉には驚いて、慌ててツッコもうと思ったら力加減まちがえてビンタしちゃったけど。
ま「カンタさんだってああいうこと言わないと思うけど」
『でも佐藤先輩だったら絶対言わない』
ま「…Aにだけなんじゃない?」
俺はノーマル餃子がいい、とぼそっと呟いたまんず。ノーマルを多めに作るよ、って返しながら包む。
『カンタくんがいろいろ買ってきてくれるの。日用品とかあまいものとか』
ま「ああ」
『だから、すっごく気を遣われているのかなあ、って最近悩んでて』
ま「・・・」
『佐藤先輩はもっとなんていうか、人は人、自分は自分、って感じだったのに…今はわたしにまで気を遣ってもらって申し訳ない反面、寂しいなーって思う。大人になっちゃったんだな、って』
ま「だから、違う人みたいってこと?」
『うん、もちろんいいことだけどさ、出来ないことができるようになる、って』
つづく
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りい(プロフ) - 個人的に気持ちに余裕がなくて趣味を疎かにしていて、久しぶりに占ツクに来て、まっさきに学パロを拝見しました。社長室さんの小説、やっぱり好きです。素敵な作品を、癒しをありがとうございます! (2019年9月23日 4時) (レス) id: 23552ed598 (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - ちひろさん» コメントありがとうございます!素敵な感想、本当に嬉しいです〜ノリノリで描いていったというよりは、すこし苦しみながらできあがっていったので、幸せを感じていただけたことを心から感謝します。ひみつのほうもぼちぼちやっていますのでまた読みにいらしてください〜 (2019年7月27日 22時) (レス) id: 37f3407064 (このIDを非表示/違反報告)
ちひろ(プロフ) - 完結おめでとうございます!今更ながら、ひみつからきて読ませていただきました。もどかしい青春が詰まっていて、社長室さんの描かれるカンタくんととみなが先輩がたまらなく大好きです。とてつもない幸せに包まれました。ありがとうございます。 (2019年7月26日 11時) (レス) id: 04f6d975f4 (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - じょん、さん» コメントありがとうございます!学パロで終わらせておけばよかったのに大風呂敷をひろげて2に続きまして、リアルタイムで呼んでくださった方にはご迷惑をおかけしました…!短編のほうは地道にやりますので、またお暇なときにでも覗いてやってください! (2019年7月5日 0時) (レス) id: 37f3407064 (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - 名無し9253号さん» お付き合いくださりありがとうございました! (2019年7月5日 0時) (レス) id: 37f3407064 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:社長室 | 作成日時:2019年6月5日 11時