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『うん。どうもありがとう。…いまは、先輩にまた会うきっかけをもらったから、倒産したこととか普通に笑い話にできそうだよ』
カ「確かにねー、トミーがAを見つけなかったら、こんな風に歩いてないってことだよね」
『うん、…ほんとうにありがとう、もろもろ、』
カ「いや!俺はなにもしてないっていうか、…ただ未練たらたらで、…Aのこと好きでいただけ、」
広い歩道の車道寄りに立ち止まると、街路樹から落ちる大粒の雫が傘にあたって、ぼたぼたと音がする。優しくて穏やかで、でも動画となると急にシビアになれる先輩が好き。
『じゃあ、好きでいてくれてありがとう』
カ「うん」
『出ていく日が決まったらみんなにも報告するね』
カ「・・・うん、そ、っか、…ちょっと寂しいけど。でも!俺応援してるから。Aがよかったら、時間作って会いに行くし」
『もちろん!、・・・・うわ、』
先輩を見上げて、傘を握る手に力を込める。嬉しくて恥ずかしくてもじもじしているとまた、雨粒が傘に落ちてくる。それに驚いてビク!と体を揺らしたわたしの顔に先輩の顔が近付いてきて。
『っ』
一瞬の不意をついて、触れるだけのキスをしていった先輩の胸をグーで殴る。
カ「痛い!あはは」
『笑い事じゃないよバッカなんじゃないの。どこだと思ってんの!』
カ「高校の先輩後輩カップルがオモテサンドーでちゅーしたってべつにいいでしょ」
先輩は開き直ってけらけら笑ってて。わたしは高校の先輩後輩カップルという単語に耐えられなくて、急激に照れる。顔が熱すぎてくらくらする。
『もうかえる!』
カ「はいはい」
へらへらしてた先輩が、帰り道が同じじゃなくなるの、ちょっと寂しい、って優しい顔で言うのが聞こえた。
わたしの手を取ってとめたタクシーに向かう先輩の背中を、きっと泣きそうな顔で見つめていたと思う。
カンタside
この家からAが出ていって一か月。出ていくまでが寂しくて、出ていってしまってからはすぐに慣れた。それは大学のときと似てる。転職と引っ越しの両方がいっぺんにきて、Aは大変そうだったけど、それと同時に楽しそうだった。
二度ほどお邪魔したけど体力的に厳しいらしく。俺がお邪魔できる夜は眠そうで、それがかわいい。けど二人でゆっくりする時間はとれてなくて、物足りないな、とは思う。
つづく
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りい(プロフ) - 個人的に気持ちに余裕がなくて趣味を疎かにしていて、久しぶりに占ツクに来て、まっさきに学パロを拝見しました。社長室さんの小説、やっぱり好きです。素敵な作品を、癒しをありがとうございます! (2019年9月23日 4時) (レス) id: 23552ed598 (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - ちひろさん» コメントありがとうございます!素敵な感想、本当に嬉しいです〜ノリノリで描いていったというよりは、すこし苦しみながらできあがっていったので、幸せを感じていただけたことを心から感謝します。ひみつのほうもぼちぼちやっていますのでまた読みにいらしてください〜 (2019年7月27日 22時) (レス) id: 37f3407064 (このIDを非表示/違反報告)
ちひろ(プロフ) - 完結おめでとうございます!今更ながら、ひみつからきて読ませていただきました。もどかしい青春が詰まっていて、社長室さんの描かれるカンタくんととみなが先輩がたまらなく大好きです。とてつもない幸せに包まれました。ありがとうございます。 (2019年7月26日 11時) (レス) id: 04f6d975f4 (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - じょん、さん» コメントありがとうございます!学パロで終わらせておけばよかったのに大風呂敷をひろげて2に続きまして、リアルタイムで呼んでくださった方にはご迷惑をおかけしました…!短編のほうは地道にやりますので、またお暇なときにでも覗いてやってください! (2019年7月5日 0時) (レス) id: 37f3407064 (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - 名無し9253号さん» お付き合いくださりありがとうございました! (2019年7月5日 0時) (レス) id: 37f3407064 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:社長室 | 作成日時:2019年6月5日 11時