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『…あれ?』
カ「…うそでしょ、」
駅前から商店街へ歩いているとき、頬に雨粒を感じて空を見上げる。その間にも雨足は強まり、先輩と顔を見合わせた。さい、あくだ。
カ「いそご、」
『…はいっ』
そうは言ってもわたしは浴衣でそんなに急いで歩けない。申し訳ない、と思って眉を下げて先輩をみると、気が付いた先輩が、わたしに手を差し伸べる。
カ「…、ほら、」
なんのことかわからなくてぽかんとしていると、右手を取られて、ふわ、って握られる。優しくて、すこしでも距離があいたら離れてしまいそうなくらい軽く握られたそれを、思い切ってわたしから強く握る。
熱い、手のひら。先輩の体温。
夏の、雨のにおい。
先輩に手を引かれてスーパーの駐輪場のすみ、屋根の下で呼吸を整える。
カ「へいき?浴衣濡れちゃったけど」
大きなリュックからフェイスタオルを出してくれた先輩に、肩や頭を拭いてっもらって普通に照れる。濡れた浴衣が体に張り付いて、不快で。しかも前髪がぺったり張り付いてしまったので、慌てて直す。
『ありがとうございます、…このタオル先輩の匂いする、』
えへへ、って笑って先輩を見ると、先輩は固まって真っ赤になってしまった。い、いまのいけなかった、のかな、
カ「…はー、Aさ、…ま、いいけど」
大きくため息を吐いて、わたしの頭にタオルをかけた先輩は、ざり、と靴でコンクリートを擦った。ありがたく頭を拭かせてもらってから、先輩に返そうと視線をむけると、先輩の頭も当然だけどすごく濡れてて。
自分がしてもらったように、先輩の頭にタオルをかぶせようと背伸びする。
カ「…そういうとこ、」
ばち、って至近距離で合った目、その時に呟かれた言葉の意味を理解するより先に、今度はしっかりと、唇が降ってくる。
『んむ』
さっきより長いから、苦しくて唸る。先輩は笑って、でもがっしり腕を回して固定されてて逃げられなかった。
カ「…鼻で呼吸できないの?」
『…なるほ、んむ!』
タオルに隠れて下手なキスを交わすなんて、まるで映画みたいだなって降り始めの雨の音を聞きながら思った。
つづく
まだまだ続きます
すんまへん
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社長室(プロフ) - じゅんりさん» お気遣い本当にありがとうございました。更新は未定ですが、眠っている短編からアップしていこうと思っています、その時はよろしくお願いします。 (2020年1月8日 22時) (レス) id: 4147535b1c (このIDを非表示/違反報告)
じゅんり(プロフ) - お気づきになったみたいで良かったです(^^)社長室さんの書く作品大好きなので、また作品上がるのを楽しみにしてます(^^)! (2020年1月7日 10時) (レス) id: a9d9714e3d (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - じゅんりさん» コメントありがとうございます。インスタには載せておりませんので無断転載になります。じゅんりさんのコメントでアカウントも把握することができました。ありがとうございます。放置ぎみになっていたところにわざわざコメントいただいて感謝です。出来る限り対処します (2020年1月6日 23時) (レス) id: 4147535b1c (このIDを非表示/違反報告)
じゅんり(プロフ) - 社長室さん初コメ失礼します。インスタに、こちらの学パロ載せたりしてませんよね?無断転載されていると思います。アカウント名など、もしお知りになりたい場合はお教えします。私もいち書き手、いちファンとして許せないので不適切アカウントとして報告しておきますね (2020年1月3日 22時) (レス) id: 035108e004 (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - おかきさん» コメントありがとうございます!終わるとみせかけて終わりません、すみません!よろしければもう少しお付き合いください〜 (2019年5月28日 13時) (レス) id: 37f3407064 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:社長室 | 作成日時:2019年3月25日 23時