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本当によろしいですか?
それではよろしければどうぞ
___なあ、それ貸してくんね?___
高校に入学してすぐ、駅への道に溢れかえる人を嫌って裏門から時間をかけて帰るわたしに、声を掛けてきた人がいた。
同じ中学の人が少なくて、隅っこでひっそりと過ごしていたわたしに、まさか話しかけてくる人がいるなんて、と驚いて振り向くと、頬に絆創膏を貼ってワイシャツと学ランを肘までまくった、…不良、の、おそらく先輩。
喉の奥がひゅっと締まって苦しい。怖くて、カバンを胸の前で抱えるようにして小さくなったわたしに、先輩は長い前髪の奥から、鋭い視線を向けて、わたしの抱えるカバンからはみ出した、古いお笑い雑誌を指さした。
それから。
ト「おせーよ」
断り切れなくて貸した廃刊の雑誌をいたく気に入った富永先輩は、返すの忘れちまうから昼飯の時読ませろと言いだして、屋上で一緒に昼休みを過ごすようになった。
わたしが本を大切にしていることにすぐに気が付いて、借りるのではなくその場で読んで返してくれるようになったので、わたしは富永先輩が怖くなくなった。
ぼろぼろの雑誌だけど、古本屋さんやネットで探した、大切な本だったから。それに気が付いてくれたから。
カ「おつかれー」
『ぎゃ』
ト「かわいくねーリアクションだなおい」
その富永先輩となぜか仲のいい、絵に描いたような優等生の佐藤先輩もふらっと屋上にくるようになって。でも佐藤先輩は先生に頼まれごとをしたり、部活の友達と過ごしたりすることも多かったから、屋上の扉が開いて、ひょろっとした佐藤先輩がぬっとでてくると、よく驚いてしまっていた。
お二人ともお笑いが好きらしく、話があって、嬉しかった。
わたしは親の影響で、特に昔のお笑いブームに興味があって、その話を理解してくれる二人は本当に貴重な存在で、丁寧に丁寧に話をした。
バラエティ番組がこうだった、これができなくなった、むかしのコント番組は予算が、NHKはいまでも、ラジオで、とか、きっと同じクラスの誰も、見向きもしない話。
カ「あ、おれ行かなきゃ、」
つづく
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社長室(プロフ) - じゅんりさん» お気遣い本当にありがとうございました。更新は未定ですが、眠っている短編からアップしていこうと思っています、その時はよろしくお願いします。 (2020年1月8日 22時) (レス) id: 4147535b1c (このIDを非表示/違反報告)
じゅんり(プロフ) - お気づきになったみたいで良かったです(^^)社長室さんの書く作品大好きなので、また作品上がるのを楽しみにしてます(^^)! (2020年1月7日 10時) (レス) id: a9d9714e3d (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - じゅんりさん» コメントありがとうございます。インスタには載せておりませんので無断転載になります。じゅんりさんのコメントでアカウントも把握することができました。ありがとうございます。放置ぎみになっていたところにわざわざコメントいただいて感謝です。出来る限り対処します (2020年1月6日 23時) (レス) id: 4147535b1c (このIDを非表示/違反報告)
じゅんり(プロフ) - 社長室さん初コメ失礼します。インスタに、こちらの学パロ載せたりしてませんよね?無断転載されていると思います。アカウント名など、もしお知りになりたい場合はお教えします。私もいち書き手、いちファンとして許せないので不適切アカウントとして報告しておきますね (2020年1月3日 22時) (レス) id: 035108e004 (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - おかきさん» コメントありがとうございます!終わるとみせかけて終わりません、すみません!よろしければもう少しお付き合いください〜 (2019年5月28日 13時) (レス) id: 37f3407064 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:社長室 | 作成日時:2019年3月25日 23時