できないけどしてほしい カンタ ページ23
カンタside
カ「…」
人間、ピンチがピンチすぎると声も出ないらしい。恐怖や緊張と同じで、実際体験しないとわからないものだ。そう俺はさっき、いまさらどうすることもできないけど、してはいけないことをした自分、というものを客観的に認識した。
キ「え、嘘ですよね」
キイチは、珍しくはっきりと俺に詰め寄った。
カ「…今日何日だっけ」
キ「いやあの、…２４日っす」
なにも見ずに答えた後輩に、ちゃんとしたやつだなあって思う。
キ「ホワイトデー、…１０日も前っすよ」
カ「…、」
言い訳もでない、ただ忘れてた。それだけ。マジで本当に自分のこういうところをなおしたいと思う。Aは２月に、たしか、…おいしい、なんか、かわいいチョコをくれて、…なんか、うそ、ごめんあんまり覚えてない。
カ「…最悪だ」
無精にもほどがある。彼氏、というより人間としてよくない、と思う反面、もうこれはなおらない、と腹をくくっている自分もいる。Aはすごく優しくて、俺を自由にさせてくれていて、むこうも常に新しいなにかと向き合って。
ホワイトデー、忘れてた、っていっても、許してくれそう、な、気がする。
…そう考えて、また嫌になる。嫌な奴になりたくないのに、自分に正直になろうとすればするほど、この嫌な自分と対峙しなければならなくて、心底うんざりする。
午後になって、Aが水溜りハウスにやってきた。謝ろうか、このまま知らんぷりをしようかまだ決めかねながらも、にこやかに迎え入れる。
『おつかれさま、パン屋さんに寄ったの、見て見て〜』
髪を切ったか染めたか、すこし雰囲気が変わったAが、ふんわり笑う。癒されるなあって感じ。いい匂いもする。そんなひとに対して、俺はイベントをすっぽかした。
カ「う、うん」
なんか目を見れなくて、自分の部屋のベッドに並んで座ったけど、逃げるようにデスクトップの画面を見た。
『あ、なんか作業ある？気にせず、どうそ』
Aが片手をあげて、どうぞどうぞ、とやって、そん時、しゃらしゃらって音がした。彼女が手首にしていたブレスレットのチャームが揺れて。
カ「あの！」
そこで我慢できずに、口火を切る。
カ「あの、ホワイトデー、」
『？』
カ「忘れて、て、ごめんなさい！」
正直にがば、と頭を下げて謝るしかない。何秒か頭を下げ続けて、おそるおそる頭を上げるとAがふにゃ、って笑って少しだけ、寂しそうな顔をした。
つづく
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ささみ(プロフ) - 初めまして。読ませていただきました！カンタくんは勿論キュンとしましたが個人的にりょうくんの話がドツボでめちゃくちゃ癒されました。またお暇があればりょうくんやトミーも書いてくださいね。これからも読ませていただきます。頑張ってください。 (2019年9月4日 23時) (
レス) id: 825eec5e34 (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - のんちゃんさん» コメントありがとうございます！嬉しいです〜好みが偏っていて似たような話ばかりですが、読み返していただいているなんて光栄です。妄想する余白みたいなのが好きで、受け取り方を縛らないような話を心掛けてます！これからも胸キュン目指してまったり頑張ります〜 (2019年5月7日 23時) (レス) id: 37f3407064 (このIDを非表示/違反報告)
のんちゃん(プロフ) - 初めまして。もう何十回も社長室さんの小説全部読み返してますこんばんは…笑 何もかも好きです。どストライクです。とってもしんどいのです。。占ツク読み始めてもう5年ほど経ちますが、これだけ胸キュンさせられたのは社長室さんが初めてです。大好きです！！ (2019年5月7日 2時) (レス) id: be54e8b475 (このIDを非表示/違反報告)
社長室(プロフ) - 翔海さん» コメントありがとうございます！笑っていただけてよかったです〜ちょっとした話みたいなやつばっかりですが、またよかったら覗いてやってください〜まったり続けていきます〜！ありがとうございました！ (2019年4月20日 0時) (レス) id: 599428703d (このIDを非表示/違反報告)
翔海(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します！！夜の体育...。例え方がまさにカンタくんっぽくて思わず笑ってしまいました！これからも楽しみにしてます！！ (2019年4月19日 22時) (レス) id: 126ce55151 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：社長室
| 作成日時：2019年2月23日 23時
