帰ろう ページ12
「……東口から出てくる確率は49%」
「何だよ、はっきりしねーな」
「あまり瑠璃子を軽く見るな。確率を俺が予想している今も、瑠璃子は俺たちの起こしそうな行動を先読みできる」
「しかし、本当なのか?氷帝のジャージを着ていたというのは」
「それは保証しますよ。皆見ていましたし、隣にいたのも氷帝の生徒でしたから」
神妙な面持ちで話を進めるのは、立海大附属中のテニス部員たち。何を話しているかまでは道行く人も聞いてはいなかった。
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沢田『って感じの会話をしてると思うのよ。んで、最終的に全部のところに待機してる状態って感じかな…』
水下ー四面楚歌過ぎじゃない?こっちは何とか帰れそう。まさかこんなに早いとはねー
沢田『うん…最悪なのはトイレ前鉢合わせ、絶望なのはワンチャン変装して女子トイレ入ってくる』
水下ーまってそんなヤバいの?ー
沢田『最悪の最悪の想定だから無いはず。…しかし技術はある。おっけ、ありがと。まとまった』
軽い返事をされたあと電話を切る。うぅぅぅぅぅと唸っても、何にもなりはしない。
げんちゃんの動きは予想する必要がない。予想どおりの動きしかしない。まーくんはひろくんと結託して意味の分からない動きをしてくる、ジャっくんとブンちゃんは乱すような動きをして………ダメだ。リンクさせるのは、げんちゃんでも、まーくんでも、ひろくんでも、ジャっくんでも、ブンちゃんの思考でもない。
すぅ、と息を吸ってトイレの鍵を開ける。
沢田『仁王先輩と柳生先輩が横から挟みうちにしてくる可能性、98%』
仁王「におっ……!?」
柳生「やぎゅう、……?」
肩を掴もうとしてきた2人の腕を避け、階段を駆け下りる。エスカレーターもエレベーターも極力使わない。何故なら動きを止めたら捕まるから!
2人が追ってこない。予想だったらもうちょい追ってくるはず。いや、良い方にことが進んでる。……南口。家からは遠回りになるけど…いやダメだ。予想してないわけがない。あそこには最低1人、もしくはまーくんとひろくんがもう移動している。
ここから1番近いのは西口。けど、戻る必要がある。
……戻ろう。
駆け出す。後ろを振り返らずに、右も左も見ずに、前だけ見て。黄色のジャージ、立海のジャージ、幼なじみが着てたジャージ。
嗚咽がこぼれる。泣くな。私が悪かったんだから。何も言えないんだから。
予想通り西口に人はいなかった。はやく帰ろう
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作者名：キメラ | 作成日時：2022年10月22日 23時
