・ ページ33
あの日、僕が知ったことがある。
手のひらから伝わる優しさがあること。口にしなくても伝わる不安や安心があること。笑顔が伝染したら、とても暖かいこと。
「僕、背ぇちっちゃくて、みんなそれでいじめんねん。やから、友達居らへんの。」
「だいじょーぶ。男の子は中学生になってからアホほど伸びるし。」
「ほんま？」
「ほんま。私小学校でめっちゃ伸びて、追いつけるかなって思ったらお兄ちゃん同じくらいにめっちゃでっかくなったし。あ、でもヤスくんよりはでっかくなったな…まぁ、私よりでっかくなれへんかもやけどそれはそれ。」
「えー！？倉ちゃんめっちゃ背ぇたっかいから僕絶対それやん…いやいつか抜かすから！」
「あっはっは。待っとるわ。それとな亮ちゃん、ちっちゃいっていじめるような奴と友達とかならんでええねん。」
「え？」
「友達って無理に作るもんちゃう。私も友達少ないけど別にそれでええ人はそれでええねん。村子ちゃんみたく、誰とでも仲良うなれる人が羨ましくなるんもわかる。けど、兄弟やからそんなとこ似るってもんでもないし。」
「でも…」
「じゃあ、ちょっとだけ勇気出してみ？」
「勇気？」
「うん。ちょっとだけ。みんないじめるって下向いてたら、そんな奴やって思われる。亮ちゃんはそんなんちゃうやろ？僕はこう！って胸張ってみて、そしたらそれを馬鹿にせーへん人おるかもしれん。そしたら、そいつとだけ友達になったらそれだけで充分やん。」
「もしおれへんかったら…？」
「私が友達や。ちゃんと目ぇ見てくれる亮ちゃんのこと、好きやし。オンナノコと仲良うすんのが恥ずかしなかったら、やけどな。」
「恥ずかしない！僕も倉ちゃんと友達がええ！倉ちゃんのこと、好きやもん！！」
「あは、ありがとう。ほら、それやで。そうやってまっすぐいてたらきっといい友達できるわ。」
世界に置いてかれてると縮こまっていた。お姉ちゃんみたいに頼もしくなれへん僕はあかん子やと。だけど、それでいいからちょっと前をむくことを知った。それが出来ない時、居場所になってくれる友達ができた。
「姉ちゃん来るまでウロウロしよ。」
倉「えーよ。どこ行くん？」
「バナナジュース！」
倉「ええ…」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 41人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：らむ倉 | 作成日時：2020年10月23日 23時
