寒波到来 ページ1
冬服解禁
寒くなってきたしね。
なのに、この人は…
す｢…クシュンッ…あ"ー…ざぶい…｣
通学路で見かけた、ツヤツヤの黒髪ストレートの後ろ姿は、長袖のカッターシャツ1枚で、ブレザーもセーターも着てなくて、華奢な肩をキュッと縮こまらせてる。あ、またクシャミした。
私服も頓着ないのは知ってたけど、寒いってことは家出たらわかるやん？なんでんな格好で歩いてんねんな。靴下短いし、あー、足も真っ白…
ため息をついて、今日初めて着てきた暖かいスヌードを外し、早歩きで少し先にいる小さな背中に近づく。
｢おはよう、すば子ちゃん。はいこれ。｣
す｢わ、倉子…え？｣
こっちを向いたすば子ちゃんにスヌードを被せて、軽く整えて。
す｢…あったかぁ…｣
｢ん、よかった。すば子ちゃん、今週は冷えるみたいやしせめてブレザーは着てこなあかんで。｣
す｢まじか…家出た時はいけるおもてんけどな、あかんかったわ。｣
｢帰りもっと寒いから、スヌード今日1日使っていいし。｣
す｢ほんまぁ？ありがとお｣
相変わらず無表情やけど、最近はすば子ちゃんが笑ってる時が分かるようになってきた。今日は寒いからかいつもより喋り方も甘めやし、鼻の頭もちょっと赤いし、モコモコのスヌードぎゅっと握って顔を埋めてて、かわいい。先輩やけど時々ちっちゃい子供みたいなとこあるねんなすば子ちゃん。
私はセーターも着てるし、さっきまでスヌードしてたから風吹いたら首筋ちょっと寒いけど、すば子ちゃんがかわいいし、ま、いいか。
あったかい、とつぶやくすば子ちゃんの頭をぽふっと撫でて、
｢はよ行こ。｣
と、学校に足を向ける。
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作者名：らむ倉 | 作成日時：2020年10月23日 23時
