青いうさぎ (ページ19)

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はじめまして・一織side ページ19

玄関までのつもりだった。

でも彼女が一瞬、夜の真っ黒な空をみて顔が曇った。ここら辺は人通りも少ないし女性1人で歩くのは心細いだろう。

「家まで送りますよ」

新人アイドルといえども女性と二人で歩くなんてリスクが高い。なのに、どうしてこんなこと言ったんだろう。

ああ、まただ。何か気づいてはいけない心の奥深くに眠っている感情がでてしまいそうな感覚。

「一ノ瀬さん、今日はありがとうございました。またゆっくりしていってください」

「こちらこそ突然押しかけてごめんね。すごく楽しかった！三月さんの作ってくれたクッキー美味しかったなあ」

「ケーキ屋の息子ですから。」

「そうなの！？」

そんな他愛のない話をしながら、私たちは夜道を歩いた。初ライブでお客さんが9人だったこと。しかし、メンバーの一人ひとりが輝くものを持っており、徐々に知名度を上げていること。私はあまり話したことがなかった芸能活動の話をした。一ノ瀬さんはそれを輝いた目で聞いていた。

「私たち、今度ミュージックフェスタにでるんです。この番組で上手くいけばデビューへの一歩になります。是非観てくださいね。」

「うん！絶対観る！」

このミューフェスは私の失敗て終わる。そんなこと、自分ですら知る由もなかった。