キミイロオモイ (ページ8)

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⑧ ページ8

緑 side

その後、ヤスはずっと謝ってた。

「おーくら、ゴメンな」

「ええって」

「おーくら、ゴメン」

「うん」

「おーくらぁ…」

「もうええから、黙り？」

そう言うと、何も言わなくなったけど、快感に身を震わせながらも、ずっと泣いていた。

だから、今夜は普段より、ずっと優しく抱いたはずなのに。

終わった後も、ずっと…泣いてた。

ヤスがこんな風に泣くのを見るのは、あの時以来。

…思いを断ち切るための、手紙を読んだ、あの日以来。

公私混同で、サイテーだとか、自分を蔑み泣いていた。

でも、本当に泣いている理由がそこに無いのは、何と無く判ってた。

何であの日、自分がヤスの側にいたのかも覚えてはいないけど、あの日側に居なかったら、今の俺らの関係は無かった。

「…ヤス、もう泣かんといて？」

宥めるように、抱きしめた背中を摩り、肩口に接吻(くちづけ)る。

「…おーくら、ゴメンなぁ、こんなコトばっかりさせて」

「こんなコトって何やねん」

「こんなコトは、こんなコトやんか」

「…何やねん、その言い方」

心の中で、何かが千切れた音がした。

「せやから、ゴメンってば」

抱きしめた、ヤスの体からそっと手を離す。

「…ええって。それよりあんまり泣いたら顔腫れるで」

「…うん」

起きなおりくしゃ、とヤスの髪を撫でると、

「…ほな、俺帰るわ」

「うん…バイバイ」

「ほなな」

身支度して、俺はヤスを見ることなく帰った。