�� ページ20
緑 side
しもた…ホンマは、あんなこと言うつもりや無かったのに。
楽屋に戻って、呑気そうなヤスの顔見たら…怒ってしもた。
同時に、何にもしてあげられなかった自分の不甲斐なさも。
ヤス、ごめんな…ヤス悪くないのに…あんな風に言うてしもて。
…もう、いやや。
帰ろ…。
手ぶらやけど、一回事務所寄って、どっか泊まれるだけの金、借りよ。
それぐらい、してくれるやろ…。
「あ！今日はありがとうございました！」
とぼとぼ歩いてたら、誰かに声をかけられた。
この子…誰やっけ？
ついたはる、マネージャーさんも頭下げたはるけど、覚えが無いなぁ。
まぁ、ええわ。
話、合わせといたら判るやろ。
「楽屋に寄らせて貰ったら、なんかお話し合いされてたみたいで…」
「あ、それもう終わってますよ、良かったらまた寄ってやって下さい」
…思い出したわ。
りょうちゃんの新しいドラマの共演者や、この子。
なんか若いのに…喋り方とか、俺らの親世代の雰囲気…。
「…それがちょっと時間が無いもので…本当に申し訳無いけど、よろしくお伝え下さい」
「あ、伝えときます。これからもよろしくお願いします」
「こちらの方こそ、よろしくお頼申します」
幾つやろ、この子。
「おい、おーくら！…あ！」
「あ、りょうちゃん」
「今日はありがとうございました」
「こっちこそ！また明日から頑張りましょね！」
りょうちゃんのガッツポーズに小ガッツで返した彼女は、小さく手を振って去って行った。
「…なんや、小さいお母さんみたいな子やな」
俺の言葉にりょうちゃんは訝しげに眉根を寄せて答えた。
「お母さんは可哀想やで、確かに年上やけど。お姉さんにしたりぃな。そんなことより、おーくら、何してんねん。早よ行くで！」
「何処へ？」
「章ちゃんが奢ってくれるねんて！」
「…俺、やめとくわ」
「なんでやねん、行こうや！そこで仲直りしたらええやん！」
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作者名：蒼乃碧 | 作成日時：2017年8月10日 2時
