キミイロオモイ (ページ18)

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緑 side

大概のことは、仕事が始まると、切り替えて集中出来る筈やのに…ヤスが観覧席に見えると、どうしても、さっきの廊下での出来事を思い出してしまう。

…これは、集中以前の問題や。

目についてまうから…あかん、集中、集中。

仕事、仕事！

どうにかこうにか、仕事に集中し始めてようやく収録も半ばを過ぎた頃。

突然、進行してた信ちゃんが大きな声を出した。

「すんません、ちょっと良いですか？」

そう言うと雛壇にツカツカと歩み寄り、上段3人の頭を手にしていた資料で叩いた

「ちゃんと集中せぇ！さっきからどこ見とんねん！」

え？俺はちゃうやろ～⁈

集中しかけてたのに～！

って。

助けを求めようと、昴くんを見ると…ぱっと、凝視してたある一点から目を離した。

そこにはヤスと…その腰に手を回さんばかりにしてる見知らぬオッサン…。

「いや、さっきからそこの観覧席で、不倫カップルが揉めとんです」

突然、昴くんがさっきまで見てた方と全く違う方を指差した。

「しかもその子、昴くんの昔の彼女なんです！」

俺も、ヤケクソ気味に作り笑顔で便乗…。

「そんなことあるか！」

昴くんは、物凄い剣幕で俺の胸倉を掴んだ。

そんな俺たちに、観覧席もざわざわし始めた。

「…昔の彼女？不倫？なんかどっかで聞いたことある話やねぇ、りょうちゃん！」

そんな雰囲気に、場違いなくらいゆっくりした間合いで、マルちゃんがりょうちゃんに振ると。

「はい、そうなんです！もうすぐ始まる、ぼくたちのドラマが…」

りょうちゃんと女優さんがうまく引き取った。

「え？番宣？番宣の時間？」

横山くんなんか、本気で驚いているけど。

結構…本気な感じで、ヤスのピンチやったかも。

けど…昴くんじゃなくて、俺が気がつきたかったな。

「無理くり来やがったな！」

信ちゃんは笑ってる。

…けど、多分判って言ってはる。

さっきの廊下での時みたいに。