バランス ページ5
【伊吹side】
「…だからね、別れた方がいいのかな…って」
突然の提案だった。
海外でのチャンスを掴んだという彼女からの報告を、心の底から喜んだ直後。
彼女が努力してようやく手に入れた海外で働くという夢。このために資格の勉強してたのも知ってる。すっごい頑張ったのも知ってる。
でもさ、そうしてAが掴んだ夢は、俺たちの関係と引き換えないと叶わないの?
「…うん、分かる、そう思うのも。だけど俺は嫌」
「えっ、でも…」
「離れてても、俺はAのこと好きだし。あと、あっちでAが他の奴に取られるのも嫌だし」
「藍…」
「俺はいっつまででも待ってるからさ、Aのやりたいこと、ちゃーんとやっておいで」
はいこの話終わり〜!とか言って無理矢理繋ぎ止めたんだったな、そういえば。
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長かった。永遠に終わらないんじゃないかと思うくらい、すんげー長い2年だった。
はじめはお互いまめにとってた連絡も、だんだん回数が減って。
それはAの新しい生活を邪魔したくなかったっていうのもあるし、俺がそのうち忙しくなってきたっていうのもあるし。
だけどAを好きな気持ちは一度も変わることはなかった。
『藍!私、もうすぐ日本に帰れそう』
「まじ!?いつ!?」
『来月のはじめかなぁ。ちゃんとした日付はまだ決まってないけど』
今月から4機捜に異動になって、今までとは違う職務にやりがいを感じ始めていた。
相棒の志摩はちょっと堅いけど、たぶんいいチームになれる。初日にあいつが車潰したのはすごかったな〜
事件は絶えないし、24時間で捜査を外れるのは不完全燃焼な気がしてたけど、なんだかんだ楽しくやっていた。
だけど決定的に足りないものがある。
2年前から一度も会ってない、抱きしめてない俺の恋人。
別れない選択をしたのは間違ってなかった。
でもね、存在を側に感じられないのがこんなにキツいとは思わなかった。
その彼女が、もうすぐ帰ってくる。
本来の帰国時期を半年過ぎたけど、ようやく。
もうすぐ帰るね、って知らされてから、やっぱりまだ帰れない、を2回繰り返して。
Aのせいじゃないのは分かるけど、がっかりしたな、あの時は。
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チェリー(プロフ) - はじめまして。リクエストしてもいいでしょうか?伊吹が主人公にプロポーズする話をお願いします。 (2020年10月22日 20時) (レス) id: 3bf9690769 (このIDを非表示/違反報告)
ニコ(プロフ) - 初めまして。いつも楽しく読ませてもらっています。質問してもいいでしょうか?死ネタは書くことができるでしょうか? (2020年10月22日 14時) (レス) id: 4a11be0ec9 (このIDを非表示/違反報告)
りり(プロフ) - こなさん» こなさん、リクエストありがとうございました!書くのが遅くなってしまって本当にすみません!楽しんでいただけると幸いです。 (2020年9月25日 15時) (レス) id: 9d1fcda077 (このIDを非表示/違反報告)
こな(プロフ) - リクエストお願いいたします!捜査依頼で彼女が英語を話すはなしを。、 (2020年9月14日 19時) (レス) id: 3a7ce308f1 (このIDを非表示/違反報告)
りり(プロフ) - こなさん» わああ嬉しい( ; ; )ありがとうございます!リクエスト、お待ちしています! (2020年8月24日 7時) (レス) id: 9d1fcda077 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りり | 作成日時:2020年8月16日 22時