過保護か独占欲か ページ28
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窓から見えるその姿に、見覚えがあった。
おい伊吹、あれって
そう言おうとした瞬間
「えっ、A!?」
隣の伊吹が嬉しそうに声を上げた。
今メロンパン号を止めている場所から、公園が見える。木陰のベンチに座っているのは、伊吹の彼女だ。
「Aー!」
伊吹が彼女の名前を呼ぶと、驚いたように手を振るAさん。でもその顔にいつもの笑顔はない。
「志摩ちょっとごめん──っ」
そう言い残して伊吹は車を降りた。
─────────
「A!どうしたんだよ」
公園のベンチに座る顔が、なんとなく歪んでいる。
「…足ひねっちゃった。ていうか、藍こそどうしたの?仕事は?」
「そんなことは今どうでもいいでしょー」
ハイヒールを脱いだ左足は腫れている。
「ずっと前に捻挫したことあるんだけどさ、その時から癖になってるみたいで、たまにあるんだよね」
笑ってるけどすげー痛そう
「わ、これはすぐ冷やさないとな」
地面に膝をついて、Aの足を乗せる
「いっ…た…今、後輩がコンビニで氷買ってきてくれるって」
──後輩
こないだカフェから一緒に出てきたあの男だと、直感した
「…へぇ」
「──ちょっと!藍、やめてよ!」
Aのバッグを自分の肩にかけて、彼女を抱えて立ち上がる。
「どこ行くの!おろしてっ」
「うるさーい。俺が面倒見た方が早いだろ」
「だとしても歩けるからっ…!重いでしょ、おろして!」
必死な彼女を無視して、メロンパン号に戻る。
「志摩〜、うしろ開けて」
助手席側から運転席に声をかけると、眉間に少しシワを寄せて驚いた様子の志摩が降りてくる。
「どうした…んですか?」
「…捻挫しただけです」
志摩に聞かれて、俺に抱えられたままのAは少し俯いたまま答えた。
「さーんきゅ」
志摩に開けてもらったドアから、メロンパン号に乗り込んでAを座らせた。
置いてある救急セットを使ってテーピングをする。
「藍、意外に上手なんだね」
「意外ってなんだよ」
「…仕事中だったのにごめんね。こんなことさせて」
「困ってる人を助けるのが仕事ですから〜」
ふふふっ、と笑ったA。
後輩が戻ってくるのを待たなくてよかったと思った。
彼女を助けていいのは俺だけでいいと思う。
(伊吹たちがいる後部座席の雰囲気が甘すぎて、)
(俺は空気になった)
─────────
メロンパン号を見に行ったら
この話が浮かびました。笑
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チェリー(プロフ) - はじめまして。リクエストしてもいいでしょうか?伊吹が主人公にプロポーズする話をお願いします。 (2020年10月22日 20時) (レス) id: 3bf9690769 (このIDを非表示/違反報告)
ニコ(プロフ) - 初めまして。いつも楽しく読ませてもらっています。質問してもいいでしょうか?死ネタは書くことができるでしょうか? (2020年10月22日 14時) (レス) id: 4a11be0ec9 (このIDを非表示/違反報告)
りり(プロフ) - こなさん» こなさん、リクエストありがとうございました!書くのが遅くなってしまって本当にすみません!楽しんでいただけると幸いです。 (2020年9月25日 15時) (レス) id: 9d1fcda077 (このIDを非表示/違反報告)
こな(プロフ) - リクエストお願いいたします!捜査依頼で彼女が英語を話すはなしを。、 (2020年9月14日 19時) (レス) id: 3a7ce308f1 (このIDを非表示/違反報告)
りり(プロフ) - こなさん» わああ嬉しい( ; ; )ありがとうございます!リクエスト、お待ちしています! (2020年8月24日 7時) (レス) id: 9d1fcda077 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りり | 作成日時:2020年8月16日 22時