光る街 ページ25
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海、と言っても都会の中の人工砂浜。ここから時間はかからない。
前に、そこから見る東京の景色が好きだと言っていた。職場からバスに乗れば20分くらいで近いから、ひとりでもよく行くんだ、って。
土曜日の夕方なのに思ったより混んでいない。家族連れやデートにぴったりのその場所に、彼女はひとりで小さく座っていた。
「A〜」
俺の声に気付くと、小さく笑った。
「ごめんね藍、ここまで来てもらっちゃって」
「いいに決まってんだろー」
Aに身体をくっつけるように、隣に座った。
なにしてたの、と聞けば
「景色見てただけ」
と、穏やかに答えた。
「私、この景色が東京で一番好き」
「うん、知ってる」
夕日が沈み始めて、空の青がオレンジと混ざる。
対岸に見えるビル群と大きい橋に、ライトが点き始める。
Aの腕に自分のを絡ませて、手を握る。
「俺ね、機捜車に乗ってあの橋走る時が一番好きなんだ」
「どうして?」
「なんかさ、帰ってきたーって感じすんだよね。窓の一個一個に人がいて、みんな暮らしてんだなーって」
「なんか分かるかも」
「Aは?なんでこの景色が好きなの?」
「…ひとりじゃないんだなーって思えるから、かな。ここからなら、向こう側が一度に見えるでしょ。端から端までビルが建ってて、幸せな人もそうじゃない人も、藍が捕まえるような犯罪者も、正しく生きてる人も、あっちには何千何万って人がいて。私もそのうちのひとりなんだなーって。あと、単純にきれいだしね」
「…ひとりじゃないだろ、Aは」
まっすぐ前を見ていた目が俺を見る。
「俺がいるじゃん?」
「──そうだね、私には藍がいるね」
頭を俺の肩に預けて、そっと息を吸う音がした。
空いている片手でAの髪を撫でる。
「藍がいてくれてよかった」
責任感の強いAのことだから、きっとギリギリまで無理して仕事してきたんだろう。
「頑張ったな、A。ほんとえらいよ」
「…ちょっとやめてよ、」
笑いながら涙声になるA。
でもありがと、と言って涙を流す彼女が、本当に愛おしくて、ずっとこのままでいたいと思った。
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9話で伊吹が一番好きな道って言ってたの、
めっちゃわかる〜〜ってなって思いつきました。笑
橋の上通るのも好きだけど、
お台場からのあの景色がたまらなく好きです。
どうでもいいですね(*'▽'*)
読んでくださって、ありがとうございました!
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チェリー(プロフ) - はじめまして。リクエストしてもいいでしょうか?伊吹が主人公にプロポーズする話をお願いします。 (2020年10月22日 20時) (レス) id: 3bf9690769 (このIDを非表示/違反報告)
ニコ(プロフ) - 初めまして。いつも楽しく読ませてもらっています。質問してもいいでしょうか?死ネタは書くことができるでしょうか? (2020年10月22日 14時) (レス) id: 4a11be0ec9 (このIDを非表示/違反報告)
りり(プロフ) - こなさん» こなさん、リクエストありがとうございました!書くのが遅くなってしまって本当にすみません!楽しんでいただけると幸いです。 (2020年9月25日 15時) (レス) id: 9d1fcda077 (このIDを非表示/違反報告)
こな(プロフ) - リクエストお願いいたします!捜査依頼で彼女が英語を話すはなしを。、 (2020年9月14日 19時) (レス) id: 3a7ce308f1 (このIDを非表示/違反報告)
りり(プロフ) - こなさん» わああ嬉しい( ; ; )ありがとうございます!リクエスト、お待ちしています! (2020年8月24日 7時) (レス) id: 9d1fcda077 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りり | 作成日時:2020年8月16日 22時