何者 ページ21
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『出張?帰ってきたばっかりなのに?』
「だよね、そうなるよね。私だって行きたくないんだけどさ」
帰国してすぐ本社に復帰して1か月。
急きょ、明後日からシンガポールへの2週間の出張が決まった。
電話で藍にそのことを伝えると、仕事だからしょーがないね、と言いながらも残念そうな声。
「ごめんね、藍。帰ってきたら、すぐ会いに行くね」
『謝んなって。俺はいつでも待ってる』
帰国してから、数えるほどしか藍に会えてない。
いっそのこと一緒に住めたらいいのにな、
引っ越したばっかりだけど。
会社の近くに家を借りて、先週ようやく引っ越しが終わったのだ。
そんなことを考えながら、スーツケースに荷物を詰め込む。
出張先での2週間は毎日忙しかった。
朝から晩まで会議の連続。藍と連絡を取る暇も大してなかった。
あー早く帰りたい
出張中この言葉を100回は繰り返したところで、いよいよ帰国日。
藍、何してるかな。
「疲れた…」
来慣れた空港をさっさと後にして、一度家に帰る。
明日は休み、藍も非番。朝、会いに行こう。疲れてるかな。
そう考えているうちに、私は眠りに落ちる。
翌朝、起きてすぐ藍の家に向かう。
♩♩♩
チャイムを鳴らすと、すぐにドアが開いた。
「おはよう!」
「…あぁ、おかえり、A」
いつもの覇気がない。様子がおかしい。
「藍、なんかあった?」
「……」
何も答えない藍。話したくないなら無理に聞かない。
それはお互いいつもそうなんだけど、藍の場合はなんでもすぐに話してくれる。だから、この今みたいな状況は、初めて。
「あ、これお土産。食べきれなかったら職場に持ってって?」
話題を変えようと、出張土産を渡す。
「おっ、さんきゅー!志摩にも分けてやるかー」
急にいつもの藍みたいな反応をする。
でも、明らかに違う。無理して笑ってる。
「出張どうだった?」
そう言いながらベッドに背中からダイブした藍。
私はテーブルに向かって座る。そのとき。
藍の携帯画面が光った。つい画面を覗くと、アプリのお知らせだった、のだけれど、その下にもいくつか通知が来ているのに気付いてしまった。
[麦: 3人で暮らす件、前向きに考えてみます ありがとう]
3人で、暮らす…?
麦って、だれ?
…心変わり?
藍は今携帯が光ったことに気付いてない。
きっと時間にしたら数秒、その間に気が動転した。
「…ごめん、仕事思い出した」
藍の返事も待たず、部屋を飛び出した。
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チェリー(プロフ) - はじめまして。リクエストしてもいいでしょうか?伊吹が主人公にプロポーズする話をお願いします。 (2020年10月22日 20時) (レス) id: 3bf9690769 (このIDを非表示/違反報告)
ニコ(プロフ) - 初めまして。いつも楽しく読ませてもらっています。質問してもいいでしょうか?死ネタは書くことができるでしょうか? (2020年10月22日 14時) (レス) id: 4a11be0ec9 (このIDを非表示/違反報告)
りり(プロフ) - こなさん» こなさん、リクエストありがとうございました!書くのが遅くなってしまって本当にすみません!楽しんでいただけると幸いです。 (2020年9月25日 15時) (レス) id: 9d1fcda077 (このIDを非表示/違反報告)
こな(プロフ) - リクエストお願いいたします!捜査依頼で彼女が英語を話すはなしを。、 (2020年9月14日 19時) (レス) id: 3a7ce308f1 (このIDを非表示/違反報告)
りり(プロフ) - こなさん» わああ嬉しい( ; ; )ありがとうございます!リクエスト、お待ちしています! (2020年8月24日 7時) (レス) id: 9d1fcda077 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りり | 作成日時:2020年8月16日 22時