インディゴブルーの詰め合わせ

遺失届と拾得物 ページ11

【主人公side】

土曜日。今日はいろはと２人で、１週間お疲れさま会と称して、この近くの温泉に行く日。そしてその前に、先日落としたお財布を交番に取りに行く日。

「こんにちはー…」

「あ！Aちゃん！…なんかこの前と違うね？」

ああ、こないだ対応してくれたおまわりさん。

「こんにちは伊吹さん。あの時は部屋着にすっぴんでしたからねー、ね、A？」

「え、うん、そうだね」

「うんうん、そんなの関係ないけど可愛い」

なんのためらいもなく可愛いなんて言えちゃうこの人は、本当に警察官なんだろうか。
今までの人生で警察官と関わったことなんてないけど、みんはこんな感じ…なの？

偶然お財布とは別のところに入れていた運転免許証を見せて、３日ぶりにお財布を取り戻した。

「お騒がせしました！本当に助かりました。ありがとうございます」

「どーいたしまして！」

この人はいつもこんなに穏やかなのか？なんだかすっごく優しそう、というかいつでも機嫌がよさそう。




電車に乗っていろはと２人、温泉に来た。
東京にいるとは思えないような自然の中で、お湯に浸かりようやく折り返した研修のことを考えた。

グループワークもプレゼンも、まだ全部終わったわけじゃないけど、みんなと何か作り上げてるって感じがして、意外と楽しい。
あと１週間で終わるのが嬉しいような、少し寂しいような。

そんなことを考えていると、

「伊吹さんって結構イケメンじゃない？」

あれ？なんか全然違うこと考えてた人がここにいる

「伊吹さん？って、あのおまわりさん？」

「そうそう。Aのタイプじゃないかもだけどさ」

意外といい人だと思うな〜と続けて笑ういろは

「いろははああいう人が好みなのね」

「え、違う違う、私には悠がいるし」

悠くんは、いろはの彼氏。高校の時から付き合っているらしい。すごいな。

「Aも元彼のこと、色々大変だったと思うけどさー、もうそろそろ新しい人見つけてもいいんじゃない？」

そうそう、大変でした。大学３年生の時に先輩の紹介から始まり半年だけ付き合った裕史。酒癖と束縛がひどくて別れた。別れるのも大変だったなー。

「そうねー、私も好きな人ができれば頑張ろうと思うけど、まずそんな人がいない。それに、まだ今は仕事に集中しなきゃかなって思うんだよね」

「んー、たしかに一理ある。でもいいと思うけどな、伊吹さん」

あーはいはい、と聞き流して、お湯から出た。

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