ちょっと遠すぎた ページ1
【主人公side】
「いつでも連絡しろよ!待ってるからな」
「わかってるよ。藍もね。1年半後には戻ってくるから」
仕事で海外に赴任することになった私が、空港まで見送りに来てくれた彼と最後に直接交わした会話。
海外赴任が決まった時、遠距離恋愛には耐えられないかも、と思って私から一度別れを切り出した。
でも藍の返事は ノー だった。
「俺はいっつまででも待ってるからさ、Aのやりたいこと、ちゃーんとやっておいで」
その言葉に救われて、信じて、そして甘えた私は、彼を残して日本を出た。
藍や家族、友達に会えないのは、たしかに寂しかった。
だけど、自分で決めたこと。ひとつの夢を叶えたという達成感も、もちろんあった。
仕事もそれなりに、いや結構忙しくて。そしてその忙しさが、余計な寂しさや不安を私に感じさせなかった。
でもそれは、ふとした時に襲ってくる。
夜寝る前に、携帯の壁紙に設定している笑顔で映る藍の写真を見ては、
藍が心変わりしていたらどうしよう。とか、
考えても仕方のない事が頭の中をグルグルした事もあった。
仕事は充実していた。ずっとやりたかった仕事を、憧れていた街で。
一緒に働く同僚たちとも仲良くなって、休みの日には観光地に連れて行ってくれたり、みんなで飲みに行くこともたくさんあった。友達もできた。
日本に戻ると正式に決まった時は、みんなと離れたくない、と思うほどだった。
その充実さに反比例するように、藍と連絡を取る頻度は、だんだん少なくなっていった。
はじめのうちは、どちらかが休みの日に数分でもいいからとビデオ通話で顔を見ていた。
メッセージも毎日数回はやりとりがあった。それがだんだん、メッセージは毎日1通来ればいい方、ビデオ通話をすることもなくなっていった。
それは決して気持ちが冷めたからとかではなくて。(少なくとも私はそう思った。)
メッセージの返事がなかなか来ないのは、時差のせい。それに、藍も忙しい。
そういえば、4月から“ヨンキソウ“というところに配属されることになったらしい。
職場も奥多摩から芝浦に異動になって。はー、いきなり都会ね。
家も引っ越すって言ってたし、きっとバタバタしてるんだろう。
──お互い忙しいから仕方ないよね。あと少し、あと少しで藍に会える。
自分にそう言い聞かせながら過ごしていた。
7,695kmの距離と16時間の時差は、思っていた以上に私たちの壁になったみたい。
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チェリー(プロフ) - はじめまして。リクエストしてもいいでしょうか?伊吹が主人公にプロポーズする話をお願いします。 (2020年10月22日 20時) (レス) id: 3bf9690769 (このIDを非表示/違反報告)
ニコ(プロフ) - 初めまして。いつも楽しく読ませてもらっています。質問してもいいでしょうか?死ネタは書くことができるでしょうか? (2020年10月22日 14時) (レス) id: 4a11be0ec9 (このIDを非表示/違反報告)
りり(プロフ) - こなさん» こなさん、リクエストありがとうございました!書くのが遅くなってしまって本当にすみません!楽しんでいただけると幸いです。 (2020年9月25日 15時) (レス) id: 9d1fcda077 (このIDを非表示/違反報告)
こな(プロフ) - リクエストお願いいたします!捜査依頼で彼女が英語を話すはなしを。、 (2020年9月14日 19時) (レス) id: 3a7ce308f1 (このIDを非表示/違反報告)
りり(プロフ) - こなさん» わああ嬉しい( ; ; )ありがとうございます!リクエスト、お待ちしています! (2020年8月24日 7時) (レス) id: 9d1fcda077 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りり | 作成日時:2020年8月16日 22時