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「はい、これどうぞ」
そしてコンビニを出るとその袋をぐいっと半ば強引に押しつけられる。
「あ、あのお金」
鞄をゴソゴソと漁っていると。
「いや、いいので。別に俺がしたくてしてるだけなので」
そう言って制止されてしまった。
私は彼のその言葉に呆然としてしまって。
今日不幸なことばっかり続いたからだろうか。
彼の優しさが心に染みて。
そして。
「え？ちょ、なんで泣くんですか！」
目の前にはおどおどと狼狽える彼。
「だってえ…」
彼に申し訳ないなと思いながらも、ぼろぼろ溢れる涙が止まらない。
「ちょ、あの、ちょっとこっち行きましょう」
慌てたように私の手を掴んで人気が少ないところへと移動する彼。
彼の手がとても暖かくて。
．
「…ごめんなさい」
私はそのあともしばらく涙が止まらなくて、彼はそんな私に狼狽えながらもずっと側にいてくれた。
涙が落ち着いてから謝ると彼は少し困ったような顔をした。
「あの、大丈夫ですか？」
「はい。ずみません…」
鼻水と涙で言葉が濁る。
「そんなに傷が痛かったんですか？」
「…いえ、そういうわけではないです」
「じゃあどうして…」
天然なのか、抜けているのか、そんなトンチンカンなことを真剣に尋ねてくる彼がなんだか可愛くて。
「ふふ」
「え、なんで突然笑うんですか？」
「いや、なんかおかしくて」
泣いた着後に突然笑い出した私に戸惑っている彼。
「俺はあなたが分かんないです」
「ふふ、ごめんなさい」
これじゃあ私ほんとにおかしいやつみたい。
でも、不貞腐れたようにそう言う彼がとても可愛かったから。
「あの、嬉しかったんです」
「…はあ」
「私今日ほんとに嫌なことばっかりで。
仕事でミスして落ち込んで、そのうえ4年付き合った彼氏にさっき振られて、帰り道におじさんにぶつかられてずっこけて…おかげでケーキもボロボロだし。
まあこれは元彼と食べる予定だったものだから1人で食べるのも虚しいし逆によかったのかもしれないけど」
「え」
「え？」
「4年付き合った彼氏に今日振られたんですか？」
ギョッとした顔をしながらそこに食いついてきた彼。
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作者名：あまなのよし。
| 作成日時：2020年12月25日 0時
