籠の中の小鳥は囀ることを忘れる【旧双黒】

5羽 ページ7

中原はコップいっぱいにお茶をいれると、Aに渡して自身はお酒を呑んだ。




(お酒呑めるってことは……大人かな……?)



コップを受け取るとある程度自由を得た体で頭を下げ、コップに口をつけて飲もうとしたが、
思うようにお茶が喉を通らずにむせる。




｢悪ぃな｣




不意にそんな声が聞こえ、思わずAは中原の方を見た。





｢太宰が変になったのは
ある資料に目を通した時だ。
元から変わってはいたがな｣





お酒を飲み干した中原はコップを机に置くと、
Aと向かい合わせになる形で座る。






Aは飲みかけであるコップの中身に視線を落とし、ゆらゆら揺れている自分の顔を見て
自嘲した。





疲れきった表情で、顔は青白い見慣れない自分の顔が写ったのだ。




｢違うよ中也、私は昔からこんな性格だった。｣




｢出たのか太宰｣





髪の毛がはねていた分、水に濡れ大人しくさせているのだが、その影響か前髪が太宰の顔に影を作り、どのような表情をしているか見れなくしている。




｢ずっと前から隠してたんだよ
それをさせなくしたのは＿＿＿＿



まぁ、そんなことどうでもいいじゃないか｣




話を途中で切ると前髪を流し、ニッコリとした表情で太宰はAに問う、




｢家に、帰りたいと思うかい?｣

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