後輩達を甘やかしたい

まだ見ぬ姿。 ページ5

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会ったこともない、顔も知らない一年生の子が死んだ。

どうやらその子は宿儺の指を食べて呪いの王こと"両面宿儺"を受肉し、この間の任務でその両面宿儺と対峙して殺されたらしい。

_____会いたかった。


『会いたかったよ…っ、』


まさか、会えないまま死んでしまうなんて考えもしなかった。

突然の死が当たり前の、この呪術界に生きているというのに。

寂しいし、辛いけど、それはきっともういないその子や同級生の子たちが一番感じてるはずだ。


『苦しかったよね、辛かったよね…』


電気のついていない寮の自室、ベットにもたれかかって涙を拭う。

拭っても拭っても、顔も知らない後輩を思ってはとめどなく溢れてくる。


忘れていたんだ、身近な人がいなくなる辛さというのを。


この界隈にいる限りこんなことはしょっちゅうあるに違いない。いい加減慣れなきゃ。


…と、コンコンコンと部屋の扉がノックされた。


「____A、私だ。大丈夫か」

『っ、真希ちゃん』


真希ちゃんだ、来てくれたんだ。

昨日からショックで何もままならない私を心配して来てくれたんだろうか。


「入っていいか」

『あ、うん、いいよ。散らかってるけど』


扉を開けて顔を出した真希ちゃんは、どこかばつが悪そうな表情をしていた。


「…ごめんな。昨日、なんで泣いてるかとか不用意に聞いて。お前の口から吐かせようとしたこと、後悔してるんだ」

『そ、そんな…！私こそごめんだよ、何も相談せず心配だけかけちゃって』


私がそう言い切ると、真希ちゃんはぎゅっと私を抱きしめた。


「…辛かったよな。A、後輩に会うの誰よりも楽しみにしてたもんな」

『…………うん、辛かった』


真希ちゃんの言葉と体温に安心して、また涙が零れそうになる。


『恵くんは、大丈夫かな。もう一人の子も。同級生が急に居なくなっちゃうなんて、私だったら耐えられないよ…』

「知ってる。憂太が海外行くときも大泣きだったもんな」

『も、もう…！その時の話は忘れる約束でしょ…！？』

「ふっ、そうだったな。一年生は思ったより大丈夫そうだぞ。これからは交流会に向けて全力でしごいてやるがな」

『えぇ〜早く会いたい』


いつのまにか悲しい思いは薄れてきて、真希ちゃんとの楽しい会話に夢中になっていた。




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