後輩達を甘やかしたい

満たされない感情。 ページ11

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東堂先輩は、さぞ面白そうに笑いながら私に近づいて来る。


「…伏黒、彼女を渡せ」

「嫌だよ。今アンタに渡したら、確実に先輩を傷つけるだろ」


ぎゅっと、私を抱く力が強くなる。

それを見た東堂先輩を笑みを消し、呆れたような目で恵くんを見た。


「何故さっき彼女を止めた。あのまま術式を発動させていたら、俺を負かすことが出来たというのに。
…やる気がまるで感じられん」



刹那、伏黒くんの纏う雰囲気が怒りに満ちた。

鋭い目つきで東堂先輩を睨む彼は、さながら凶暴な狼のようで。



「…俺があそこで止めなければ、人一倍優しい先輩はきっと後から自分がしたことを重く受け止めて気に病むに違いないと思ったからですよ。

アンタのことで先輩が頭を悩ませるなんて、考えただけで怒りで狂い死にそうですし。

…下手に出てりゃ偉そうに、そこまで言うなら___」


______やってやるよ



怒りを超えて殺意。

どす黒く滲んだオーラが渦巻いて、私と同じように東堂先輩でさえも怯んだ。


それに気がついたのか、私に何も見せないというように恵くんの左手が私の目元を覆う。

彼の右手は離さんとばかりに私の腹に回されていた。


これでは彼は術式を発動できないはずなのに、なんだかそれ以上の事を彼はやってのけそうな気がして。


「宮眞先輩、俺の側から離れないでください。
絶対に守ってみせるので」


『…っ、恵くん、だめ、』



私の声は、今の彼には届かない。


東堂先輩も構える。

そして今にも噛みつかんとする狼が、その強大な殺意の篭った呪いを解き放とうとしたとき。



「______"動くな"」



棘くんの呪言によって、私を含めその場にいたみんなが固まる。



「何やってんのー！！」


その後パンダくんの右ストレートが東堂先輩にヒット。


「フゥ、ギリギリセーフ」

「おかか！」

「うんまぁアウトっちゃアウトか」




二人が来たことにほっと胸を撫で下ろしていると、恵くんは私に回していた手をそっと離した。


『恵くん、ありがとうね… 私先輩なのに、助けてもらってばっかりだったや』

____良いとこ見せられると思ったのになぁ…


少ししゅん…としてそう言えば、恵くんは驚いたような顔をしたのち、少し頰を染めて目を逸らした。

「いえ、そんなことないです。先輩はちゃんと俺を守ってくれましたよ」


『！…へへ、そうかな…？』



良かった、ちゃんと先輩できてた。




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