甘い嘘から始めよう【S.O】 (ページ43)

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43.NO or YES?…side O ページ43

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その子は、俺の笑顔を見るなり

ふるふると震えはじめて。見るからに泣きそうになっているのが分かった。

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智(…ふん。)

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智(別に泣けばいいよ。でも頭良いもんなこの子)

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智(…ここで泣いたら負けだってことぐらい、分かってる)

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案の定、彼女は泣かなかった。

ただただキッと俺を見上げて睨み付けると、「お代です！」って財布から千円を置いて

逃げるように去っていった。

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智(…バカだな)

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ゆらゆら、と揺れるカフェオレの水面。

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智(世の中はそんなにドラマみたいなもんじゃないんだよ)

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何でも屋になってから、沢山の人を見てきた。

自己保身のため

ただの興味本位

本当に困ってる人

俺を陥れようとする人

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全員が全員、あんなに綺麗なまま生きれるわけがない。

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でも。

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『ーーーーっ…、お願いします！私を助けてください！』

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数年して、初めて君が事務所に飛び込んできたときは本気でビビった。

あどけなかった子どもは、垢抜けて綺麗な女になってて

そして一番ビビったのは、一目見てやって来たのがあの時の女の子だと気づいた自分自身。

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どうやら彼女は俺に気づいてないらしく。まあそりゃそうだ。友達の彼氏、しかも別れたやつなんて覚えてるワケがない。

なんだかそれが不公平に感じて。

…そして自分自身に問いかけた。なんで俺は覚えてる？

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答えは歴然。

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『あの…なんて呼べば？』

智『え？あー…』

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智『智。大野、智』

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何故、本名を彼女に教えたのかは自分でもよくわからない。

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仕事上、偽名を使わなきゃならなかったはず。

なのに気づくと口からは自分の本当の名前が出ていて、「智くん」と何度も自分の名前を咀嚼する彼女がおかしくって

自然と笑ってた。

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彼女を覚えていた理由は簡潔で、そして明確。

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あの時。思い切り傷つけてしまったのと

思い切りーーーー…、彼女が眩しかった。

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無条件に、泣ける君が眩しかった。

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