37.さようならのキス ページ37
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和也「今日のさ、星座占い。俺12位だったんだー」
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お客様と言われたら拒絶はできない。
つくづくこの人はずるい人だ、と思いながらもいつも通りシャンプーに連れていって
彼を寝かせて、端正なその顔の上にそっ…とタオルをかける。
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ジャー…。とシャワー音が今日はやけに遠く感じた。
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「…お湯、熱くないですか？」
和也「ん。ちょうどいい」
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そっ…と彼の髪の毛に触れた瞬間。
彼がそんな言葉を口にした。
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和也「俺はさ？星座占いとか死んでも信じないタイプなのね？」
「へえ。まあそんな気はしてました」
和也「だって同じ星座の人間がこの世に何万人いると思ってんの？って」
「……」
和也「何万人も一日、同じ運命だったら怖いじゃない。だから絶対信じないのよ」
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タオルを顔にかけた二宮さんがモゴモゴと口を動かして熱弁する。
この人は私と同じ考え方をしている。
確か双子座だったっけ…。
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「シャンプーしますね」
和也「でもね」
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和也「今日は信じなきゃいけないなって」
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シャンプーをしようと、そっ…と彼の髪の毛に触れる三秒前。
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それはスローモーションだった。
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シャンプーをする場所は仕切られているから、他の人には見られない死角。
しかも今は混んでいなくて、このスペースには私と二宮さんだけ。
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三。
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はらり…と彼の顔を覆ってたタオルが床に落ちる。
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二。
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寝転んでいたはずの彼の上半身がむくりと起きだす。
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一。
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グイ、と腕を取られて片方の手で私の首を掴む。
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ぜろ。
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和也「ーーーーー…」
「ーーー…」
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二宮さんの唇は、微かな煙草の味。
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和也「……」
「……」
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ちゅ、とお互いの唇と唇が触れる程度の可愛いキスだった。
しかも一度。触れたらおしまい。
離れてお互いの視線が絡みあったら、
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「……ありがとう…」
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無性に、泣けた。
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