33.タチが悪い男 ページ33
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“俺にしとかない？”
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“…A”
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人はあまりの言葉を受けると、本当に動けなくなってしまうんだと
誰かが言っていたのをよく覚えている。
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「……」
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後ろから抱きしめられた温もり。
耳に当てられた熱。
首に回された腕は自分が思ってる以上にしっかりしていて
細いと思っていた体は私の体をスッポリ包み込んだ。
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ーーーー…馬鹿馬鹿しい。
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＊「最近二宮さんお店に来ませんねー」
「…」
＊「あんなに毎日来てたのに。橋本さんのこと諦めたんですかね？ね？」
「え？あぁ…、そうかもね」
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ーーーー…和也『俺にしとかない？……A』
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あの夜。
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『………離してください』
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窓の外。下を他の女の人と笑いながら歩く智くんの姿を見下ろして
やけに冷静沈着だった自分。それはどうせ何でも屋の依頼主だろう、と判断できたから。
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和也『…無理』
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そしていつもより、強引で我儘だった二宮さん。
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『こういうの、困ります』
和也『困ってよ』
『は…？』
和也『俺のことでもっと困ってよ。存分に悩んでよ。悩んで、悩んで、悩み抜いて』
『…』
和也『一日ぐらい、頭の中俺でいっぱいにしてくれてもいいでしょ』
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あの人はタチが悪い。
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『…クソですね』
和也『汚っ！言葉汚っ！あー！汚ねー！』
『ならこんな言葉汚い女はや…』
和也『めないよ』
『…』
和也『やめない。』
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そして、私をよく困らせる。
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和也『俺は好きなら好き。嫌いなら嫌い。誰かのために、とか他人のために自分を犠牲にはしないタイプなのね』
『…』
和也『だから、人のものだろうがなかろうが。波風を立てようが立てまいが』
『…』
和也『俺は俺。そのスタンスを崩すつもりはーーー…ないよ』
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送ってく。
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そう微笑んで、私の頭を撫でた二宮さんは本当に私を困らせるのが上手い。
結局、家まで送ってもらって。その途中だって彼のペースで
私はその晩、比喩じゃなくて眠れなかった。
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34.ピーチ&ピーチ→←32.涙で埋まる夜、君の温もりが唯一の救いだった
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