19.理由なんかはなくて ページ19
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彼を家にあげたのは、何の意味もない。
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「ただ雨でぬれていたから、風邪をひかれると困るから」
それだけの、単純明快な理由だ。
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「シャワー浴びてきてください。このままじゃ風邪引いちゃいます。服は乾燥機に。下着はーーー…、コンビニで買ってきますから」
和也「あぁ…、ごめん。」
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雨が滴る二宮さんは確かにかっこよくて、部屋に入ってひとまずバスタオルを渡すと
ゴシゴシと男の人がよくやる、テキトーな髪の拭き方でそのテキトーさに少しだけドキリとした。
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二宮さんを半ば強引に浴室に足を向かわせて、バタンと扉が閉まる音がしたら
こころの奥っ側に突っかかってた何かが取れる。
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ちょうどよかった、と思ってる。
智くんとのキスを、忘れられる。あの意味も何もかもわからないキスを
二宮さんといれば、ひと時の間でも忘れることができる。って
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私は、二宮さんを利用しようとしている。
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「下着…、Tシャツ…」
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マンションから出てすぐにコンビニはあって、今じゃ何でも揃っているから本当に便利。
フリーサイズの下着とTシャツ云々を買って、すぐに部屋へと踵を返す。
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人員不足。
あんなに有名で、お客さんだって私が勤めてる店より何倍もの人を引き込んでいるのに
どんどん辞めていく。
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それに苦しんでた二宮さんは、私を引き抜こうとしてた。
ようやく結ばれた点と線がーーー…、歪な形をしている。
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部屋に戻ると、まだ浴室からシャワーの音が聞こえて
そっ…と脱衣室に入って、洗濯機の上に買ってきた着替えを置いてまたすぐに退散。
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扉から薄く見える、二宮さんの姿が無駄に色っぽくて見てはいけないものを見た気がしてすぐに目を逸らした。
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「……」
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ポチ、とテレビの電源を入れると大して面白くない番組がやっている。
ソファに腰を沈めて、ただその面白くない番組をただ、見る。
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やがてシャワーの音が途切れて、しばらくすると私がさっき買ってきた全てを身につけた彼が出てきて
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和也「…なにみてんの？」
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…って、私のシャンプーの香りを引き連れて隣に座った。
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