13.カシスオレンジな女の子 ページ13
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智「メシ食いに行こう」
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そう言われたのは、私の家がある駅に着いた時だった。
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いきなりのお誘いに戸惑って、「え…」って唇を半開きにすれば
これからの相談も兼ねて、と付け加えられたから私はなんの迷いもなく目の前の扉の向こうに進むことはやめた。
これが何もないただのご飯、とかだったら「なんで？」ってなったけど相談も兼ねているなら断る理由はない。
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私と智くんは、大人たちしかいない街を歩いて小さな居酒屋に入った。
智くんは上出来のスーツを羽織っているから、なんだかそれっぽく見えて
顔だっていいから、すれ違う女性たちが恍惚の眼差しを向けているのに彼は一向に気づく気配はなくて
あぁ…、この人は周りには無関心なんだ。って隣を歩いてて分かった。
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お店に入って、案内されて二人向かい合うように座って。
メニューを渡される。少し煙たい空気がなんだかホッとする。
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智「俺、取り敢えず生だけど。Aちゃんは？カシスオレンジとか？」
「ちょっ…(笑)、ないです、カシスオレンジなんて。大学生の時にしか飲んだことないです、しかも一度きり」
智「そんな気がしたー。だって飲まなそうだもん、そういう私女子です！っていう酒」
「心外です、それは！私だって女子ですよ。あーもう分かった、カシスオレンジ頼んじゃいますからね！」
智「うそうそうそ。生でしょ？すみませーん、生二つー」
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なんでだろう。この人といるとホッとする。
なんて言うの？こう…、言わなくても私の気持ちを汲み取ってくれていると言うか。
きっとそれは彼の持ち前の能力で、仕事柄そういうのがあると便利だからなんだろうけど
目の前でお手拭きで手を拭きながら、ふわぁーあって大きなあくびをしてるこの人を見るとーーー…
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なんだか、胸がキュッとなる。
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(……ん？胸がキュッ…？)
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胸がキュッってなる感覚ってなんだっけ。
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智「二宮和也。なかなかメンドくさい男だなー」
「へっ？あっ…、でしょう？一度決めたことはやり抜くまでやる精神だそうで…」
智「手強いかもしんないね、長引くかも」
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長引けばいい。
…ってあれ？また？
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