【d!】無痛覚傷年 (ページ2)

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A視点

白黒で構成された世界に、自由が許されない一日

日常

どこかに置いてきてしまった感覚を取り戻すことができず、
どうしようもなく

ただ、一日を繰り返す

起床してからまず両親から受ける怪我のチェック
耳が腐るほど聞かされたルール

「肌を出さないように長袖を着ること。

運動はしないこと。

学校が終わったらすぐに病院に向かうこと。」

彼らにとっては我が子を守るのに必死なのかもしれないが
僕にとってはきつく縛られた鎖で、苦痛だった。多分。

多分、というのも感覚を表情筋を無くした今
自分の感情の認識が曖昧になっているのだ。

でも、きっとそれを知られたら。

これ以上身動きができなくなるのは嫌だった。

奇怪に見られ、蔓延る噂が。

ただ、我が子を守りたいだけの両親を嫌いになることが。

夢のないこの世界が。

でもどうしょうもない。

今日もなあなあと日常を過ごす。

はずだった。

いくら無理をするなと言われても

手が届く場所に、助けを求めている人がいるなら

ちょっとくらいの無理はいいよね。

高速で迫る車、驚き震える子供。

｢もう、大丈夫｣

やけに落ち着いて聞こえる自分の声。

走る、あの子の所まで。

ほら、間に合った。

尻もちくらいなんてことないでしょ?

生きてるんだから。

空が見えたと思ったら地面に伏せられる。

音と視界が、僕の世界の終わりを告げる。

暗転、上昇。

??｢君は、取り戻さなくていいの?

何を忘れたかも覚えていないなら、

自分で探して、見つけてみなさい。

君の世界を取り戻すために｣

降下、開幕。