ニンゲンサマ ab ne ( ab × iw ) ページ26
僕の神様。
僕だけの、神様。
「阿部くん！おはようございます！！」
見えた背中に駆け寄った。
大好きな人の大きな背中。
「おはよう、如恵留。」
柔らかく笑って「ノエルは今日も元気だね」なんて言って下げた僕の頭をぽんぽんと撫でてくれた。暖かい手のひら、優しく可愛らしい顔からは想像できないほどの大きな手。
顔を上げればいつもみたいな柔らかい表情で笑う阿部くんが僕のことをじっと見つめていた。
「雑誌？」
「っはい！表紙の撮影で……」
「そっか、」
「阿部くん……」
「如恵留ーーー！！はやく！」
───阿部くん、何かありましたか？
聞こうと思った言葉は聞き慣れた声に遮られて、いつもの顔した阿部くんが「早く行ってあげな？」って言ってくれたから、お礼だけ言ってその場を去った。
最後まで僕の神様は笑顔だった。
撮影に戻っても阿部くんの顔が頭から離れなかった。
特段顔色が悪いという訳では無いのだけれど、ほんの少し違和感があった。ただそれだけ。それだけなのに、気になって仕方がなかった。
心ここにあらずというのが伝わってしまったのか、メンバーの何人かには心配されて、少しだけ気分が落ちる。
こんなことで顔色を暗くしてい場合では無いのに。
切り替えるために少し頭を振れば「あれ、そっちの方がいいね」なんて言われちゃって。
セットの仕方、悪かったかな？なんて。
僕の神様、どうか僕の勘違いであって。
結局撮影が終わってもこの胸のモヤモヤは取れそうになくて、いるかどうかは分からないけれど「勝手にごめんなさい」と心の中で告げて楽屋に向かった。
元気な姿が見れたら、それでいいと思って。
阿部くんと会ったフロアを暫く歩いていればsnowman様と書かれた楽屋を見つけて、近づいてみれば扉が少し開いていて、そこから光と小さな声が漏れ出ているのが分かった。
扉をノックしようと手の甲をかざした瞬間だった
「ほんと頑張りすぎなんだよ阿部は。」
「ん、ごめ、ひかる、」
蚊の鳴くような声で息をする僕の神様の声がした。
思わず少し空いた扉の隙間から楽屋の中を覗く。
そこには立っている岩本くんと、ソファに横たわる誰か──多分、阿部くん。
ソファの背もたれに隠れて何も見えないけれどあの声からして多分そうだろう。
やっぱり。
岩本くんに支えられながらも上半身を起こした誰かの後ろ姿は
僕が尊敬してやまない先輩の姿、僕の神様の背中。
僕の神様は、僕に不調であることを見せさえもしてくれない
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作者名：あませさん | 作成日時：2023年8月21日 19時
