＿＿＿＿ ページ22
「あ、おかえり、照」
ガチャリと扉が開いたと思えば顔だけが扉から出される。俺と目が合えばふにゃりと笑って部屋の中に入れてくれた。
「ひーハン楽しみだなぁ……」
なんて呟きながら俺の前を歩く阿部は、少し前に見た時より幾分が細くなっているような気がして。
「なにか、手伝えることある？」
「ううん、いいよ。俺が誘ったんだし楽にしてて？」
「んー、そっかぁ、わかったぁ」
少しだけ、ほんの少しだけ。何かがおかしい気がした。
コレがおかしいと断定できるほどのものでは無いけれど、いつもの阿部ではない。そんな気がしたんだ。
「阿部ー？出来たよー」
キッチンから阿部がいるであろうリビングに結構大きな声で話しかけたんだけど、一向に帰ってこない返事に不安になってしまう。
「……阿部？あぁ、寝てんのか。」
リビングを覗けば床に座ってソファにもたれかかる阿部の姿。
じっと傍で見つめていれば目の下に薄ら見える隈と少し荒れた唇が見えて思わず頬に触れて、目の下をそっと親指でなぞった。
「……ん、ひかる、？」
んふふ、どしたの、緩く笑う阿部。俺の手を離そうとすることも、俺と目を合わせようともしない。俺から目を合わせにいけばすぐに逸らされてしまった。
「……阿部、なんかあったでしょ。」
一種の賭けみたいなものだった。「なんも無いよ？」そう言って笑われてしまったら、もう何も言えなくなってしまうから。
「なんにも、ないよ、？」
そうやって笑う阿部は凄く苦しそうで。いや、本人は笑ってるつもりなのかもしれないけど、上手く口角が上がってないしなによりも、つーっとその頬を伝う液体が全てを物語っていた。
「無いわけ、ないでしょ。じゃあなんで泣いてんの。」
「ないて、ないよ。大丈夫おれは元気だよ。」
頬を伝う涙を無視して大丈夫と繰り返す阿部はやっぱり笑えていなくて。
涙を堪えて震える体を抱き寄せた。
肩口が濡れる。
まだ俺の事を頼ってくれるのだと思うと、遠慮がちに背中に回された手に酷く安心した。暫く背中をさすっていれば体の震えは止まっていって、ただ鼻をすする音が断続的に聞こえてきていた。
「……ごめん、ありがとう。」
「いいよ、そんなの全然。
いつもありがとう。」
阿部が話したくなければ深くは聞かないけどさ、やっぱり辛い時に近くにいるのは俺がいいじゃん。話してくれなくてもいいから、ただ、君のそばに居させて。
そばにいさせて fin.
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
㊗️Iwさん
●頑張り屋さんな君だから ab × nb , mm→←そばにいさせて ab × iw
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 350人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あませさん | 作成日時：2023年8月21日 19時
