あなたと痛い 3 (ページ21)

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そばにいさせて ab × iw ページ21

どれだけ言葉を選んでも、誰も傷つけないようにしても、どうしても自分の言いたいことが相手に伝わって欲しい解釈で伝わらない時がある。
でもそれはどうしようも無いことで、だって人間の関係だから。
1対1ならまだしも1対不特定多数だったら尚更。

『あの言い方ムカつく』『ありえない』『何様のつもり？』

並べてみると自分が苦しくなるんだけど、でもこれからの自分のために、もう誰も傷つけないように。

誰かを傷つけないようにするには自分が傷ついて、色んな人の思う“嫌”を理解しないといけないから。理解しなきゃ、また誰かを傷つけるから。

　 ♢

阿部の様子が可笑しいなんて、もうきっと皆気がついてる。
でも中々声をかけられないのは本人が明るく振舞って、何も辛そうな一面を見せてはくれないからで、

ゆらりと揺れるカーディガンの裾が、何だか忌まわしく思えた。

「阿部。」

「ん、照どしたぁ？」

「今日、家来てよ。」

「分かった！けどどしたの？珍しいね笑」

カーディガンを萌え袖して口元に手を当てる阿部。そういうとこだぞ。なんて思いながら誘いの言葉を紡ぐ。

「いや？なんとなく。いいだろ？」

「うん、大丈夫。楽しみ笑」

一部始終を聞いていた奴らから「えー！あべちゃんずるーい！俺も照ん家行きたかったぁ！」なんて駄々を捏ねてたりもするけれど、バレバレだからな心配そうな顔してんの。

確認したけど、今日は阿部も俺も午後の仕事はない日。だからこの雑誌撮影が今日の終わりでインタビューに答えたらあとは帰るだけ。

「じゃねーー！」

インタビューが終わったら、次の仕事がある奴らはすぐ次へ。そうじゃない俺らはゆっくり帰りの準備。

「阿部ー、何食べたい？」

「えぇ？作ってくれんの？やった
　じゃ、ひーハン作ってよ。久しぶりに！」

「おっけー、じゃあスーパー寄るけど着いてくる？」

「んー、いいや。先照の家いる」

「そ、じゃこれ」

カチャリ、差し出された掌に鍵を置くとふにゃりと笑って「待ってるねぇ」なんて笑うから。

無意識に出た右手は、そのふわふわな髪を味わっていた。

「んふふ、どしたのほんとに笑」

　 ♢

阿部と別れてスーパーへ。

阿部大丈夫かなぁ、そんな一抹の不安を抱えながらも材料を買い込む。
車で家に着くまでもその不安は消えてはくれなくて、連絡をしようとメール画面を開いては閉じてを繰り返していた。

ピンポーン。

自分の家の呼び鈴鳴らすなんて中々ないよな、なんて。