あなたと痛い 3 (ページ3)

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「……うぇ、っ、ん」

「大丈夫、吐いちゃいな。
　我慢するの苦しいでしょ。」

嘔吐いた瞬間に背中をトントンと軽く叩かれて刺激で吐き出してしまった。口元は手で抑えていたけど収まりきらなかった汚物が机の上に零れ落ちて広がっていくのが分かる。
胃液とご飯の混ざったぐちゃぐちゃない臭いが鼻を抜けて吐き気が増幅していく。
苦しい、気持ち悪い、臭い、苦い、ぐちゃぐちゃな感情が胸の裡をグルグルと廻って、それしか考えられなくて、目の端から溢れる涙の感覚が久しぶりで嫌になる。

漸く落ち着いたと思ったら足の力が急に抜けて暖かくて逞しい腕に支えられた。

「……やめ、きたな、ぃ、」

手や衣装についてしまっているだろうし汚いから支えてくれるのは嬉しいだけど、そのせいで舘様まで汚れて欲しくなくて、手は汚れているから言葉で離そうとした。

「大丈夫だよ。別に汚くないし、それに阿部がこのまま倒れる方が困る。」

「……ん、ごめ……」

「謝んないで。」

体を支えてもらってソファに寝転がると真剣な目で見つめられて、ムズ痒い。
タオルで口元を拭ったり、衣装を脱ぐを手伝ってくれたり、俺の気持ちを考えてかスタッフさんを呼ばないでくれたり。ありがたいんだけど、絶対舘様1人じゃ大変なのに顔色1つ変えずにやってくれる姿に申し訳なくなってしまう。

「阿部」

「……なに、だてさま」

「我慢できてえらいね。」

「……ぇ？」

「ずっと、苦しかったでしょ。気持ち悪かったでしょ。
　頑張って耐えたね、ありがとう。」

"ありがとう"その一言が自分の心の中に波紋のように静かに広がっていく。
ポカポカとした暖かさに包まれて、「……ごめん、なさぃ」
涙が零れそうになるのを必死に耐えながらそう呟けば、

「ほら、すぐ謝んないの。俺は阿部の"ありがとう"が聞きたい。」

舘様の匂いに包まれることで急に安心して、瞼が重くなっていった。

「……あり、が、とぉ」

ぼやける視界と意識の中で必死に舘様の背中に手を回す。

「ふふっ、おやすみ。」

あぁ、暖かい。

無理させちゃってごめんね。でも頑張ってくれてありがとう。
仕事の一つ一つを丁寧に楽しむ阿部が大好きだよ。いつもありがとう。
背中に回された手が可愛くて仕方なくて、思わず頬が緩んだ。

頑張らなきゃ fin.
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リクエスト作品です。
あまり、無理しないでくださいね。
過度な無理は体調を崩しますから。