＿＿＿＿ ページ19
割と同じくらいのサイズ感だったと思うんだけどな。
「いやふっかには無理だろ笑」
「いや、俺にだってポテンシャルはあるね！
いくぞ！！んっ、…………ぇ？」
「は……？っ、すげぇなふっか！お前まさか……鍛えてたっ、だと！？」
「……っ、気づいちゃったぁ？俺もやる時はやるんだよ！！」
「ははっ、まさかふっかに持たれるとは思わなかったなぁ、」
ねぇ、なんで。なんであんなに軽かったの。
なんで？阿部ちゃん。俺が持てるぐらい痩せてるなんてさ、聞いてないよ。
「……あべちゃ、」
「ごめ、ふっか。俺もう帰らなきゃ。」
「いやちょっ！」
撮影が終わり、帰ろうとするあべちゃんに声をかけた。が、
掴もうとした右手は空を切った。
離れていく背中が小さく見えて、なんでこんなに俺は頼って貰えないのだろう。そんな仄暗い感情がふつふつと湧いては消えてゆく。
「ふっか、」
「……ん、」
「あべちゃん、だいじょぶ……じゃ、ないよね、」
「……そ、だね。」
あぁ、沈黙が苦しい。
「まぁ、どうにかするよ。」
「ん、よろしく。多分、というか、ふっかじゃないとダメだろうし。」
佐久間さんだって繰り返せば学ぶんだから！そう言って笑う佐久間は悲しそうで。強がって笑わなくたっていいのにさ、すぐそうやって無理をする。
最近また濃くなったピンク色の髪を優しく撫でれば嬉しそうな声が聞こえてきた。
「じゃね、ふっか。」
「ん、おやすみ。」
♢
真っ黒な扉の目の前でひとつ、息を吐く。
俺だけが知っている、唯一の彼の安寧の地。
ピンポンと可愛らしい音が鳴ったあと無機質な扉を開ける音がする。
「どしたの、ふっか。」
「わかってんでしょ。阿部ちゃん。」
「ははっ、そんな怖い顔しないでよ。ほら、寒いでしょ？」
そう言って笑った君は俺の手を引っ張って後ろ手に鍵を閉める。
「ほら、進んでよ」靴を脱いだ俺の背中を押す阿部ちゃんの手は、やっぱり幾分か細くなっていて。
「……で？どしたの、急に。」
リビングに入ったらソファまで連れてこられて、座るように言われる。
大人しく座れば、その隣に俯き気味に座る阿部ちゃんが沈黙を破って言葉を発した。あーあ、分かってるくせに。
「……あべちゃんさ、痩せたでしょ。
そうでもなきゃ、俺が阿部ちゃんを抱っこできるはずがない。」
完全に俯いてしまった君の頬を両手で挟んで目を合わせて、真っ直ぐその綺麗な瞳を見つめる。
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作者名：あませさん | 作成日時：2023年8月21日 19時
