あなたと痛い 3 (ページ15)

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●願うならばそれは ab × sk ページ15

血が出ることなんて、そう簡単には起こらない。
子供の頃は親に守られていたからか怪我をしたことはほとんどないし、snowmanになってからはアクロバットの練習で怪我して痣ができることはあったけど、精々打撲程度。テレビによく出るようになってからは気をつけるようにもしてたから血が出ることなんてなかった。

「った……」

指先から流れる紅。痛くもないのに痛いと言ってしまうのは、直接切れる瞬間を見ているからだろうか。
つーっと手のひらの辺りまで流れてくるソレを俺は見守ることしか出来なかった。

「……っ、あべちゃん、？…………あっ、血出てるじゃん！！」

えっとー、ティシュとー、あ！あーと絆創膏！…っあ！あべちゃんその場から動かないでね！！待っててよ？ね！？なんて異常な程に焦る君は、俺の指先から流れるソレを見ては苦しそうに笑って必要なものを探しに行くんだ。

「あはっ、大袈裟だなぁ……」

佐久間は心配しすぎなんだよ。これくらい大丈夫なのにね。

そのあともただぼーっとしていると気づいたら目の前に佐久間がいて。

「……ん、ありがとさくま。」

「いーえ。」

あっ、もう1時か。なんか、ココ最近気がついたら夜中な気がする。まぁそれだけ仕事に集中できてるってことなんだろう。それなら、いい。

　 ♢

鈍くなった痛覚はもう戻らない。まるで彼が望んでいるかのように。

あの日は満月が綺麗な夜だった。
流れ星も流れていて、綺麗だね、何願おう？なんて話していた。

「ここまででいいよ。送ってくれてありがとね」

「ん、いーえ。じゃーねあべちゃん。ゆっくり休むんだよ？」

「うん、ありがとう。そうする。笑」

朝から少し疲れ気味に過ごしていた阿部ちゃん。
仕事が終わるタイミングが一緒だったから無理言って一緒に帰らせてもらったんだ。まぁここまででいいって結局最後までは送らせてくれなかったんだけど。

バイバイと手を振られてしまえば、もう踵を返す他なくて。
だって阿部ちゃん、見送らせてくんないんだもん。俺が角を曲がるまでずーっと小さく手を振ってる。

今日もまた見慣れた景色を曲がっていく、はずだった。

「ちょっ、やめっ、さ、く…」

本当に微かな声。でも俺の耳にはハッキリとそのSOSが届いた。
急いで道を戻れば激しく揉み合う人影。
「やめてっ、」「…は、なしてっ」なんて声もチラホラと聞こえてくる。でもそれは、聞き覚えのある声で思わず震えた。
なんで？なんでそんなことになってんのさ。