あなたと痛い 3 (ページ13)

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「分かった。」そうやって笑えばくしゃりと歪む顔。これが阿部くんのホントの笑顔なのかな。俺には分からないけれど、なぜだかそんな気がする。

もはや阿部くん専用になりつつあるココアパウダーの袋を開く。開けた拍子に舞った粉に噎せると心配の目線が向けられる。大丈夫、そう伝えながらマグカップの中にスプーンで適量パウダーを入れれば、コトコトと火にかけていた水が沸騰し始める。

「はい、どうぞ。」

コトリ。マグカップの縁のギリギリまで入れたココアをゆっくりと零さないように阿部くんの目の前に置くとマグカップの取っ手に手が伸びる。

マグカップの縁に口を当てれば、少しした後に喉仏が上下する。

「……おいしい」

嬉しそうに呟いた阿部くんはそのあとも何も喋ることなくココアを飲み続けた。両手でマグカップをもってちびちびと飲む姿は可愛くて可愛くて笑みがこぼれてしまう。

「さくませんせ、」

「ん？」

「ぎゅって、して、？」

あぁ、やっぱり。幼い。これが本当の君なのかな。

返事をする代わりにゆっくりと阿部くんに近づく。
体を俺の方に向けて上目遣いで俺を見る阿部くんは本当に可愛くて口角を抑えるのが必死だった。

「えらいね、よく頑張ったね」

ゆっくり頭を撫でながら俺の腕の中に阿部くんを閉じ込める。
俺よりも遥かに身長の高い君だけど、この瞬間だけは俺が大きく居られるんだ、俺が、君を支えていられるんだ。

暫く優しく頭やら背中やらを撫でていると聞こえてくる穏やかな息の音に起こさないようにゆっくりと顔を覗けば微かに残った涙の跡。

「おやすみ、阿部くん。」

君がいい夢を見られますように。

いとしい fin.
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『優しい夢へ連れてって』

更新再開させていただきます。
お待ちいただきありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。
あませ。