あなたと痛い 3 (ページ2)

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●頑張らなきゃ ab × dt ページ2

舘様と一緒に呼ばれた大食い企画。
舘様は沢山食べるから俺も負けないように頑張んなきゃって思って撮影前に気合を入れた。

企画への意気込みとか、どんだけ食べれるとか。よくあるトークをしてから始まって、最初らへんは良かったんだ。ペース良く食べれてたと思う。だけどもう、辛い。もう吐きそう。このままギブアップしてしまいたい。でも、横にいる舘様はまだ余裕そうに口の中にかきこんでいる。凄いよなぁ、俺は手が止まりそうだよ。
こんだけで折れてちゃダメだ。舘様は沢山食べてる。俺がここでギブアップしちゃったら、舘様の頑張りが、俺のせいでダメになってしまう。
そう思いなおして、箸を持つ手に力を入れ直した。

だいぶ、やばい。料理を口に運ぶ手が段々遅くなっているのが自分でもわかる。

「阿部さんはちょっと手が止まりかけてますね、」

「いやー結構キツイですね笑」

うまく、笑えているだろうか。
本当ならもうギブアップしたいけれど、隣でご飯を食べ続ける舘様に申し訳なく思えて、それに絵面的にも……ね。やっぱりアイドルは多い方がいいでしょ。

結局ギブアップはしなかったけど、完食も出来なかった。
対して舘様はしっかり完食。最後らへんは殆ど手が止まってたから、舘様の心配する目線とかが見えちゃって。
頭の中では、この放送が流れたらみんなどう思うんだろうって考えてた。舘様は頑張って食べているのに、俺はなんでこんなに出来ないんだろうって。呼ばれたからには、頑張らなきないけないのに。

「いや、ほんとに悔しいです……！」なんて。

　 ♢

「阿部大丈夫？」

共演者さんやスタッフさんに挨拶したあとに2人で楽屋に向かう最中、そんなふうに舘様に声を掛けられた。あぁ、ダメだ。今そんなこと言われたら、苦しくて仕方なくなってしまう。
頭の中で訳の分からない感情がグルグルと廻っているのが分かる。

ちゃんと返事をしなきゃいけないんだけど、何かを声に出したら吐いてしまいそうだから、小さく頷いた。

楽屋に着いてからまた、舘様に「本当に大丈夫？」と聞かれた。
だからやめてってば。我慢できなくなっちゃうから。
この気持ち悪さをどうにかしたくて、でも、折角美味しいものを食べさせて貰ったんだし、作った人に申し訳なくなるから吐きたくはなくて。

また少し頷いてから片手で口を抑えてもう片方で机に手をついた。そうしていたら少しでも治ってくれるような気がして。

「阿部……」

やめてよ、背中をさすらないで。