Broken Rainbow (ページ3)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:15,519 hit

EP.03 ページ3

Jazz Bar『Firebird』

洒落た字体でそう書かれた看板の建物。そこに6人は暮らしている。

１階は、看板の通り、夜はジャズバーとして営業している。

もちろん「仕事」がある日は休業だ。

不定休の気まぐれ営業の店でも、洒落た雰囲気と、上質な音楽を求めて、常連客は集まる。

もちろん「仕事」の客もだが。

まだ午前中。

店が開くまでにだいぶ時間はある。

建物の２階のリビングに３階の自分の部屋から一番最初に降りてきたのはリチャードだ。

２階には、年下3人の部屋とリビングとキッチン。

３階には、年上3人の部屋と風呂と武器庫兼作戦部屋。

リチャードは、慣れた手つきで冷蔵庫から作り置きのおかずと、鮭を取り出す。

見かけによらず、朝から和食派がリチャードだ。

「リチャくんおはようございます。」

「ああ、おはようマサカド。朝飯食う？」

「え、ええんですか？すんません。」

「おん、早起き特典。」

次に、３階から降りてきたのは、マサカドだった。

これも大体、いつものパターン。

年下3人とセイヤは、朝ごはんの時間に起きていることはほぼ無い。

マサカドと2人だとなんて静かなんだろう。

そんなふうに思いながら、リチャードは鮭をじっくりと焼いていく自分の手元を見つめていた。

・

・

・

昼頃になると、建物内は途端に騒がしくなる。

楽器の練習をするもの、情報収集の担当のもの、出かけるもの。

はたから見れば、6人の若者のシェアハウスといったところだろうか。

彼らが、夜になれば人を無情に殺しに行くなんて誰も思わないだろう。

「マサヤー、次のターゲットどれ？」

「これです。前回のターゲットの元右腕で今は別組織を作ってますね。今から、ジョウくんの所に行きますけど、セイヤくんも来ます？」

「まあそやなー。暇やしなー。」

「やった！帰りにこのカフェ寄りません？」

「リチャくん。弾数ってまだ足りてます？横山くんからメール来てましたよ。」

「ああ、もう連絡済みやで。今度届けに来てくれるって。』

「あ、そうっすか。了解でーす。」

それでも、彼らの日常会話には、ターゲット、武器、殺害方法。そんな言葉が普通に混じり、それに違和感を感じるものはいない。

ずっとそうしてきたから。

そうでないと、目的を果たせないから。

生きていけないから。