其の後 ページ50
あの子が帰ってから
毎晩屋根に登る影があった。
影は音が鳴らないよう細心の注意を払っていたが、
それでも分かる者には分かるぐらいの音であった。
聴力の優れたここの責任者、�霤弔砲蓮�
｢望、｣
『…おー、崇裕』
望は崇裕が来てもさほど驚きも嫌がりもしなかった。
バレていることが分かっていたのかもしれない。
よいしょ、と体全部を屋根に乗せた崇裕が
寝そべる望の隣に身を置いた。
｢なんか見えるか？｣
『いや？何も』
｢…Aのことも？｣
『……見えへんな』
あの日と違う月のない真っ暗な夜空では見えるものも見えない。
ここから唯一生きて帰ったあの子は
きっと自分たちのことを忘れるだろう。
毎日毎日生きるのに必死で、いつの間にか記憶の隅からも
消えてしまうのだ。
自分たちはいつまでも、あの子のことが色褪せないのに。
赤い花に囲まれたこの場所では
誰かを忘れることさえ許されない。
『あいつ流星と結婚したんやで』
｢…あぁ、俺の墓立ててくれた時一瞬見えたわ｣
あの子がこちらに思いを寄せるときだけ
向こうの姿を見ることが出来る。
『ウエディングドレス…めっちゃ綺麗やった』
芽にもならなかった気持ちが、あの子が帰ってから芽吹いたのだ。
遅すぎた。
もう、どんなに月日が経とうと会えることは無い。
『……生きときゃよかった』
崇裕は何も言わず、望の肩をポンと叩いた。
それからゆっくり屋根を降りて、彼の傍には誰もいなくなった。
屋根を濡らす雫は、闇に紛れて溶けていった。
終わり
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はのん(プロフ) - カジャさん» すごいです！1話でもめっちゃ嬉しくて興奮してしまいました！！ありがとうございます！！！ (2022年10月4日 21時) (
レス) @page50 id: eb6042d99a (このIDを非表示/違反報告)
カジャ(プロフ) - はのんさん» 全く考えていなかったため、このように1話のみとなってしまいましたが…リクエスト、ありがとうございました。 (2022年10月4日 15時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
はのん(プロフ) - そんな風に言っていただいて嬉しいです！望くんと濱ちゃんのその後を書いて欲しいです！ (2022年10月3日 18時) (レス) id: eb6042d99a (このIDを非表示/違反報告)
カジャ(プロフ) - はのんさん» 応援ありがとうございました。はのん様の言葉がとても力になりました。その後、というのは望くんサイドでしょうか？それとも夢主と流星とのお話でしょうか？ (2022年10月3日 14時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
はのん(プロフ) - 全部読ませていただきました！終わってしまって寂しいです。もしよければ、その後どうなったかのおまけ的なの書いてほしいくらいです！ (2022年10月2日 21時) (レス) @page49 id: eb6042d99a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カジャ
| 作成日時：2022年9月11日 21時
